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UN-KNOWN:チームQの潜入記録  作者: やた
File02.盤上のマニピュレーター

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6.タクティカル・ブリーチ

 ヴィクターの指がトリガーを絞ろうとしたその瞬間、世界が反転した。


 邸宅の深淵から、心臓を抉るような重低音の警報が鳴り響く。書斎の重厚な空気が物理的に震え、ヴィクターの眉が驚愕に跳ねた。


「何事だ!」


 怒号と同時に、書斎の強化ガラスが粉砕された。凄まじい衝撃音。間髪入れず、3発のキャニスター弾が室内に撃ち込まれる。


「フラッシュ・バン!」


 誰かが叫ぶ暇もなかった。爆辞的な閃光と白煙が視界を奪う。煙が晴れたとき、そこには数秒前まで立っていたはずの男女の姿はなかった。粉砕された窓枠には、高強度カーボンのラペリングロープが夜風に揺れている。


「追え!地下だ、地下を死守しろ!」


 ヴィクターが無線に怒鳴り散らす。だが、返ってきたのは絶望的な報告だった。


『ボス、メインサーバールームの電子ロックが強制解除されました! 外部からの介入です!』



 3時間前。アヴァロン作戦会議室。


 ホログラムの断層図を前に、レンは冷徹に言い放っていた。


「ヴィクターの防御は完璧だ。だが、完璧すぎるがゆえに、その構造は予測可能だ」


 クラウディアが補足する。


『今回の作戦では大きく2つのネットワークを掌握する必要があります。まず、1つ目の邸宅のセキュリティネットワークは、トイレの天井裏に唯一の脆弱なハブが存在します。アイリス様がそこにデバイスを設置すれば、わたくしが監視系を掌握できます。しかし――』


 青い光が地下の最深部を指した。


『メインサーバーだけは別系統の独立回線です。物理的なデバイス接続による解錠は可能ですが、その瞬間にシステムが異常を検知し、全館に警報が鳴り響く仕様になっています。また、ハッキング完了までの所要時間は、180秒』


「つまり、その3分間、警備の連中を釘付けにしなきゃならねえってことだな」


 ガウスが愛銃のボルトを叩き込む。


「そうだ。だからこそ、僕とアイリスが囮になる。僕の正体は遅かれ早かれ彼にバレるだろう。ヴィクターの性格なら、泳がせたネズミを確実に仕留めるため、屋敷の精鋭を書斎へ集めるはずだ。その隙にガウスが地下を落とす」


「狂ってるな。だが、嫌いじゃねえ」



 現在。セントーサ島、北800メートルの丘。


 マヤはスコープの十字線を、書斎から飛び出そうとする警備員の頭部に固定していた。彼女の指先は、鼓動の合間を縫ってトリガーを引く。


――プシュッ。


 サプレッサーから漏れる乾いた音。書斎のバルコニーに躍り出た警備員の膝が折れ、そのまま闇に沈んだ。マヤは次々にボルトを操作し、煙幕の中から現れる「脅威」を精密に間引いていく。


 一方、ロープで下層のテラスへ着地したレンとアイリスは、タキシードを脱ぎ捨て、ドレスの裾を裂いた。その下には、超薄型のケブラーベストと、分解状態で隠し持っていたサブコンパクト・ウェポンが姿を現す。


「アイリス、階段を封鎖しろ。ガウスに背中を撃たせるな」


「了解。……パーティーはおしまいよ、お掃除の時間ね」


 アイリスがSIG P365を構え、地下へ向かおうとする警備兵の足を正確に射抜く。レンもまた、流れるような動作でベレッタを操り、遮蔽物を利用しながら敵の進路を断った。


 パニックに陥った「犯罪者の見本市」の客たちは、我先にと屋敷から脱出していく。彼らもまた、警察が来る前に消えなければならない身だ。


『レン様、脱出する客たちの生体情報、及び通信記録の全コピーを完了。彼らの秘密はすべてデータベースに記録しました。将来的な「活用」が可能です』


 クラウディアの報告を聞きながら、レンは背後の壁を蹴り、迫りくる武装兵に向けて弾丸を放った。


「ガウス、あと何秒だ!」


「うるせえ!あと45秒……いや、30秒だ!このクソ重いデータを吸い出すまで、一歩も通させねえぞ!」


 地下からガウスの咆哮が響く。屋敷全体が、180秒という名の「死のカウントダウン」に包まれていた。

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