496 Re:シルダートのダンジョン ⑨
八階層目は、森エリアだ。冒険者の姿は無い。
道中多少は遭遇するかもしれないが、ここまで来ると数は少なかった。
アンクを偵察に出して先へと進むと、俺とレフの前にモンスターが立ち塞がる。
「ぶひっ!」
「ぶぶぅ」
「ぶたぁん!」
それは、青い肌をしたハイオークだった。一応鑑定してみる。
種族:ハイオーク
種族特性
【集団指揮】【無属性適性】
【パワーアップ】【腕力上昇(小)】
【体力上昇(小)】【悪食】【他種族交配】
ハイオークは、Cランクモンスターだ。指揮官タイプで、無属性魔法も使える。
今回は集団で現れたが、いったいどの個体が指揮をしているのだろうか。まあ、どうでもいい。さっさと倒そう。
俺は擬剣パンドラソードを抜くと、ハイオークたちに斬りかかった。
「ぶひゃっ!?」
「ぶふぉっ」
「ひでぶっ!!」
ハイオークたちは為す術もなく、部位分けされて転がる。
「あ、オークを倒した時の癖が出た」
「にゃん!」
「そうだな。ハイオークは0枚だし、カード化しよう」
「にゃんにゃ」
以前ハイオークは一枚持っていたが、その個体はハパンナ子爵に譲渡していた。
なのでハイオークの所持枚数は、現在0枚である。
そうして、ハイオークたちをカード化した。オーク軍団を召喚するときがあれば、使えるかもしれない。
とりあえず、ある程度の枚数はそろえておこう。
それから探索を再開して、他にも何種類かのモンスターに遭遇する。
木に擬態したハイトレントや、巨大な蛇であるジャイアントサーペントだ。
種族:ハイトレント
種族特性
【自然治癒力上昇(中)】【硬化】
【エナジードレイン】【身体操作上昇(中)】
【擬態】【再生】
◆
種族:ジャイアントサーペント
種族特性
【熱感知】【威圧】【束縛力上昇(中)】
【身体能力上昇(小)】【顎強化(小)】
まずハイトレントはトレントの上位種で、純粋に強化されている。
俺が持っているアプルトレントとの違いは、アプル生成の代わりに、再生のスキルを所持していることだ。
次にジャイアントサーペントは、既に30枚所持しているモンスターである。
こちらも、グリーンサーペントの上位種だろう。毒牙を失った代わりに、身体能力が向上している。
どちらもCランクモンスターなので、カード化することに決めた。
戦闘については、特にいうことはない。楽勝だった。
そんなことを思い出していると、道中新たなモンスターが現れる。
「ウホッ!」
「うっほ!」
「うほほっ!」
それは茶色い毛をした、ゴリラの集団だった。
種族:ブラウンゴリラ
種族特性
【無属性適性】【パワーアップ】
【小波】【身軽】【投擲】
【気配感知】【ドラミング】
【腕力上昇(中)】【技量上昇(小)】
名称は、ブラウンゴリラというようだ。Cランクモンスターだと思われるが、それにしてはスキルが強い。
加えてドラミングという、初めて見るスキルを所持していた。
名称:ドラミング
効果
・このスキルには以下の効果が内包される。
【威圧】【鼓舞】【継続戦闘】
鑑定してみると、思ったよりも優秀なスキルだ。
見れば自身の胸を叩いて、スキルを発動していた。ドンドコと、太鼓のような音が辺りに響く。
複数体同時に行っているので、中々の迫力だ。
威圧の効果もあるので、弱い冒険者なら動けなくなるだろう。
まあ、俺とレフは普通に動けるがな。
「レフ、やるぞ」
「にゃぁああ!」
するとレフが初っ端から、ダークサンダーを口から放つ。
「ウヴォっ!?」
「うっほ……!」
「ヴぉぎゃぁ!!」
そして黒焦げになったブラウンゴリラたちが、地に伏した。倒したので、とりあえずカード化。
「……よし、先へと進もう」
「にゃん」
Cランク相手では、苦戦するなどありえない。俺がすることは、何もなかった。
戦闘面では少々退屈だったが、まあ新しいカードを手に入れたので満足だ。
道中には他にも罠があるが、それもアンクから報告してもらって回避する。
落とし穴や捕獲ネット、木の隙間から矢が飛んでくる罠もあった。
しかしその中で、一つ面白いものを発見する。
ほう。モンスターを呼び出す罠か。
アンクから聞く限りその罠のある場所を踏むと、モンスターを呼び寄せる音が鳴り響くらしい。
普通なら危険な罠だが、俺としては逆に有益だった。わざわざモンスターを探す手間が省ける。
そういうわけで、俺はその罠を踏んだ。
ビビィーーー!!!
すると辺り一面に、甲高い音が鳴り響く。それと同時に、森の奥からモンスターたちが押し寄せてくる気配を感じた。
「ブモモ!」
「――!」
「うほっ!」
「ぶひぃ!」
「……!!」
種類関係なく、十数体ほど現れる。これは凶悪な罠だ。普通の冒険者なら、たまったものではないだろう。
ん? 一匹初見のモンスターが混じっているな。
見れば巨大な毒々しい色の蛾が、一匹飛んでいた。直径は1mほどある。
俺は気になったので、鑑定を飛ばす。
種族:グレートポイズンモス
種族特性
【幻属性適性】【スリープ】【フィアー】
【猛毒鱗粉】【毒無効】【飛行】
【魔力上昇(中)】【精神耐性(小)】
名称:猛毒鱗粉
効果
・一定の確率で相手に毒(大)を付与する。
これはCランクではなく、Bランクだな。この強さのモンスターも、とうとう出てきたか。
それと猛毒鱗粉が厄介だ。俺は状態異常耐性(特大)があるので大丈夫だが、レフは危ない。
神猫の心得に状態異常耐性(中)が内包されているが、それで防ぎきるのは難しかった。
ここは、速攻で仕留めるべきだな。
俺は擬剣パンドラソードを抜くと、七属剣技で光属性を纏う。それにより、剣が僅かに淡く光り始めた。
俺が行っているのは、闇闘技場で見せたものの劣化版だ。強すぎると、死骸が残らない。
そしてこちらに向かってくるモンスターたちが十分に迫ってくると同時に、俺は力を解き放つ。
「喰らえ、七属剣技、ライトスラッシュ!」
「ぶひゃっ!」
「――っ!!」
「ウヴォアッ!」
「ぶぎゃっ!?」
「……!?」
辺り一面が、光に包まれる。モンスターたちは光の斬撃により、臓物をぶちまける。
当然狙い定めていた、グレートポイズンモスも例外ではない。緑色の体液を撒き散らして、動きを止める。
よし、死骸を消滅させないくらいには、威力を抑えられた。あとは、攻撃を免れたモンスターを倒すだけだ。
「レフ、行け!」
「にゃぁあ!」
そう思い、残りはレフに譲った。モンスターたちが、レフの力に抗えるはずがない。
最後はカード化を行い、凄惨な場面は即座に消える。死骸は全てカードに変わった。
「グレートポイズンモス、ゲットだ」
「にゃんにゃん!」
「ガァ、あーしもまぜてー! げっとだしっ!」
わざわざアンクが戻ってくると、俺の胸に飛び込んでから嬉しそうに声を出す。
「この状況だと、げっとされたのはアンクになるな」
「ガァ、げっとされちゃった♡」
「に゛ゃ゛ぁ゛あ゛あ゛!!!」
そんな一幕がありつつも、俺たちは先へと進む。
モンスターを呼び寄せる罠は数こそ少ないものの、見つけたらその都度発動した。
するとあまり見つからないグレートポイズンモスが必ず一匹はいるので、とても便利な罠だ。
そしてこの階層に出現するモンスターも、出揃う。
8F:森エリア
・ハイトレント(C)
・ブラウンゴリラ(C)
・ハイオーク(C)
・ジャイアントサーペント(C)
・グレートポイズンモス(B)
八階層目ということもあって、モンスターの質もかなり上がってきている。
俺としてはありがたい限りだが、冒険者側だと過酷な階層だろう。
特にグレートポイズンモスはBランクの上に、猛毒鱗粉というスキルまで所持している。
対策をするか俺のように瞬殺しなければ、毒に悩まされるのは間違いない。
冒険者をほぼ見かけなかったのにも、納得だ。
あとなぜかグレートポイズンモスという名称を見ると、究極完全態という言葉が脳裏に過る。
地球にいた頃に見た、何かの漫画のデータに影響されたのだろう。
もしこの世界にいたら、Aランクを超えてSランクかもしれないな。
ハパンナダンジョンのボス、グレートキャタピラーがAランクだったので、その可能性は十分にある。
仮にグレートキャタピラーをカード化していたら、究極完全態グレートポイズンモスになったのだろうか。
途中蛹を挟む気もするが、あるかもしれない。
まあ、グレートキャタピラーをカード化したらダンジョンが崩壊するので、どのみちカード化はできないんだけどな。
そんなことを妄想しながら、俺たちは無事に階段を見つける。
あとはアンクと手分けして、モンスターを狩ってカードを集めた。
結果としてこの階層では、これだけのカードを手に入れる。
・ハイトレント 268枚
・ブラウンゴリラ 300枚
・ハイオーク 300枚
・ジャイアントサーペント 220枚
(既存と合わせて250枚)
・グレートポイズンモス 20枚
罠に加えていくつか巣も見つけたことで、短期間でこれだけ集めることができた。
それでもグレートポイズンモスはレア枠だったからか、20枚になっている。
モンスターを呼び出す罠自体も、数が少なかった。
まああんな凶悪な罠が頻繁にあったら、ダンジョンもコストがかかり過ぎて大変だろう。
それにモンスターを呼び出す罠には、宝箱がなかった。であればコスト的に、数が少なくても仕方がない。
だが代わりに探索中、いくつか宝箱を見つける。
個人的にほぼ大したものでなかったので省くが、一つだけ良い物があった。
それがこれだ。
名称:ハイランクの証
説明
・装備者の魔力・魔力操作・精神力を小増加させる。
・装備者の体力と魔力の自然回復量を小増加させる。
・この腕輪は装備者のサイズに調整される。
・この腕輪は時間経過と共に修復されていく。
ハイオークの巣を壊滅させたとき、宝箱から出てきた腕輪である。
エリートの証と似たような効果であり、違いは一つ目の項目だ。
エリートの証が腕力・速度・技量に対して、ハイランクの証は魔力・魔力操作・精神力となっている。
見た目も銀色をした腕輪で、中央には青い宝石のような物が埋め込まれていた。
違いは、宝石の色が赤か青かだ。
ちょうどいいので、左腕のテクニカルバングルと入れ替えておく。
両腕に装備した腕輪にも統一感が出て、良い感じだ。
思ったよりも長居してしまったが、満足いく結果になったので良しとしよう。
それに残すは、次の九階層目だけだ。
俺はそう考えながら、レフとアンクを連れて階段を下りるのだった。




