SS ヴラシュが城に辿り着くまで ③
※推奨読了話数194話くらいです。
城があるという方へと歩き続けたけど、一向に城は見えない。
貰った肉片は既に無くなり、頼みの綱である血液袋も空になってしまった。
飢餓耐性(小)と脱水耐性(小)があるとはいえ、それにも限界がある。
飢えと渇きで、このままではどうにかなりそうだった。
しかしそれでも、ここまで来て進路変更をする勇気は持ち合わせてはいない。
長い木の棒を杖代わりに、僕はそれでもかすかな望みに賭けて進み続けた。
この大地は、あまりにも不毛すぎる。食料はまず無いし、水なんてまだ一度も見ていない。
生命が住むのは、まず不可能じゃないか。そんな風に思ってしまう。
それにいるのはゾンビやスケルトン、飛んでいるのも骨の鳥だけだ。
骨なのに、いったいどうやって飛んでいるのだろうか?
そう思いながらも、僕もヴァンパイアの種族特性で、一時的にコウモリに変身できることを思い出した。
しかし実行に移そうにも、既に変身するだけの体力や集中力を、僕は持ち合わせていなかったのである。
もしかしたらこの世界に来た時に変身していれば、もっと楽だったのかもしれない。
でもヴァンパイアになったばかりで、僕は自分の力を扱い切れていなかった。
だとしたら仮に使えたとしても、あまり上手くはいかなかったかもしれない。
それにどのみち、現状では他のスキルも含めて、使うだけの気力が無かった。
だから僕は神授スキルである不死者の友達の効果に賭けて、近くにいるゾンビに声をかける。
「あの……僕を運んではくれませんか?」
「ウヴぁぁ……?」
そうお願いしたのだけど、ゾンビは首を傾げて去ってしまう。
やっぱり、だめだったみたいだ……。
その後も何度か他のアンデッドにもお願いをしたのだけど、同様の結果だった。
何となく分かっていたけど、初対面の相手にそこまでの事は出来ないらしい。
道を尋ねるくらいなら大丈夫だけど、目的地まで運んでもらうのはダメみたいだった。
なので結局、自分の足で歩くしかない。
けれども次第に視界もおぼつかなくなっていき、意識も朦朧としてくる。
このまま僕は、この世界で何もできずに終わっちゃうのかな……?
そんなネガティブな考えが、常に脳内にチラついていた。
けど不思議と僕の足は、止まることなく進み続ける。この部分は、流石ヴァンパイアというところだろうか。
しかしいくらデメリットを帳消しにしたヴァンパイアだとしても、限界がある。
そうしてとうとう僕は、その場に倒れてしまう。
最後の方は、どこを歩いていたのかも分からないくらいに、限界を迎えていた。
ここで、お終いか……。
「み、水……」
最後にそう絞り出すかのように声を出すと、僕の意識はそこで途絶えた。
だけど僕はこのとき、気がついていなかったんだ。僕が倒れていた場所が、目的地である城の目の前だったことに。
なのでもはやこれまでかと思っていた僕だったけど、奇跡的に助かることになる。
後に名前を教えて貰ったドヴォールさんとザグールさんが、見つけてくれたみたいだった。
その結果として救い出された僕は、城の客室に寝かされていたのである。
それから目覚めた後に水や食料を分けてもらい、ヴァンパイアということもあって瞬く間に僕は回復していく。
本当は血液の方が回復も早かったんだけど、流石に血液のストックは無かったみたい。
そうして城のダンジョンで拾われた僕は、そこでルミナリア女王様と出会う。
最初はその姿に驚いたけど、内面は素晴らしいお方だった。気がつけば僕は、ルミナリア女王様に惚れていたんだよね。
だから僕は、ルミナリア女王様とこのダンジョンの力になりたかった。それにこの場所は、とても居心地がいい。失う訳にはいかないという気持ちもあった。
そしてルミナリア女王様にお願いして守護者にしてもらうと、城のために僕は働き始める。
最初は何もできなかったけど、少しずつ不死者の友達の効果で、できることも増えていった。
アンデッドが作成できるようになってからは、ガシャドクロを作り出すことにも成功する。
まさに順風満帆だった。けど次第に、このダンジョンが何者かに支配されていることにも僕は気がつき始める。
どうにかしたい。ルミナリア女王様を助けたい。そう思ったけど、僕では力不足だった。
だからこの状況をどうにかできる何かが必要だと、僕は強く思う。できれば自分の力でどうにかしたかったけど、それも難しい。
しかしそんな悩みを抱えながら、日々を送っていたある日のことだった。そう、彼がこの城のダンジョンにやってきたのである。
きっと何かが変わる。そんな予感がして、僕は彼、ジン君とコンタクトを取ることにしたんだ。
この出会いは僕らにとって、果たして福音になるのだろうか? ルミナリア女王様が自由になる為だったら、僕はこの命を投げ出してもいい。
だからどうか、お願いします。このダンジョンを支配している魔の手から、ルミナリア女王様をお救いください。
僕は祈る相手もいないのに、そう願わずにはいられなかった。




