蒼色と金色と
第2回戦、メアとの戦いです。前回は美夏と一騎打ちでしたが、今回は多対一の戦闘なので、果たしてどうなるのか・・・・・・
「さて、そろそろ定刻や」
腕時計の針は21;00を指していた。時間ピッタリだ。
道のほとんどがレンガで舗装されている西街地区の中で、例外的にタイル舗装されていない場所がある。1つは建物の中。そしてもう一つはここ。自然公園の一角、噴水広場だ。
「うん・・・・・・やっぱ、砂利の方が足に馴染むわね」
「美夏は砂地の方が強くなるの?」
「なんていうか、しっくりくるのよね。レンガ敷きってデコボコしてるからあまり安定しないって言うか」
「そういうもんなの?」
「そーいうもんよ」
美夏は準備体操をして、その時を今か今かと待ち構えていた。その顔はリラックスしとるけど、油断は出来ん。前回みたく暴走しなけりゃええやけど・・・・・・まあ、今回は平気やろ
視線を美夏の左に向ける
「いや~まさかお2人が来てくれはるとは!ありがたいわ~」
「隊長に報告したら私が最後まで面倒見ることになったんですよ。よろしくお願いしますね!」
「ふ、ふん!!べ、別に私は貴方達に協力しに来たのではなく、あくまで学園都市の秩序を乱す輩を野放しにできないだけであって、別に馴れ合うつもりはありませんわ!」
「それでも全然かまへんよ。来てくれただけでもうれしいわぁ」
「ありがと~。そう言われるとお姉さんも頑張らないわけにはいかないな」
翠色のポニーテールの須藤さんだった。今日も学生服に『会長』と書かれた腕章を付けて着ている。もう一人は栗色のセミロングの十和田先輩。警備隊の制服をきっちり着こなしていた。
2人とも協力してくれるみたいや。
「ふ、ふん!・・・・・・そういえば」
「愛ちゃん? どったの、忘れもの?」
「神林さんは何処ですの?てっきり来ているのかと」
「いま、恭弥は入院中なの」
「え!?前に会った時は元気でしたのに・・・・・・」
「なんだか分からないけど急にいなくなってね~。ね~仁」
「じ、仁さん!?私の恭弥さんに何をしましたの!?」
「ごふっ!?」
いきなりグーパンで殴ってきおった!?
リアクションが取れんレベルのパンチが綺麗に水月に決まり、たまらず悶えていたが、ふと気付く。何か気になる発言をしておったような・・・・・・
「須藤さん?今、『私の』恭弥って言いおった?」
「そうですけど?それが何か」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・あ、愛ちゃん」
「何ですの?美夏」
「もしかして、愛ちゃんって恭弥のこと、好きなの」
「ええ」
美夏の恐る恐る訊いた質問に、すっきりとした表情で声高らかに宣言した
「私、須藤愛は先日の恭弥さんの告白を受けると決めましたわ!!!」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
開いた口が塞がらないとはこの事なんだろう。美夏もヒメルもワイも固まってしまう。十和田先輩だけ「はわぁ~」とにこやかな笑みで須藤さんに
「ほ、ほんとなんですか!?須藤さん、恭弥さんとお付き合いするんですか?」
「・・・・・・最初は美夏を巡って喧嘩していました仲でしたの。ですが、数日前告白されまして・・・・・・あんなに真っ直ぐな言葉で私を求めてきた殿方は恭弥さんが初めてでしたの」
「ど、どんな告白をされたんですか!?」
「『―――俺は、須藤さんが欲しい』って言ったんですのよ~~!!」
「はわ~!!素敵ですね!!」
「「「・・・・・・」」」
「あら、どうしたのです、美夏?そんな鳩が機関銃を食らったような顔をして」
「「「・・・・・・」」」
「感極まって、言葉が出ないんじゃないんですか」
「なるほど。確かに、美夏も恭弥さんのこと――――」
「「「はぁあああ~~~~~~!!!??」」」
かなり遅れてやっとリアクションが出てきた。須藤さんの発言があまりにもアレすぎて言葉を理解するのにだいぶ時間がかかってしまった。
「な、なんなんですの!?いきなり大声を出したりして!」
「え、ちょっ、待っ。え、ええぇ~~!!」
「仁さん、何なんですの!?そのリアクション」
「あ、愛ちゃん・・・・・・マジなの?」
「マジ、ですわ!ああ、愛しの恭弥さん。一体あなたは今何処に・・・・・・」
「な、なんなんや。その乙女な発言」
「愛ちゃん・・・・・・」
一人乙女空間に入ってしまった須藤さんは、とりあえず放置しておく。ちゅーか、あまり関わりたくないわ。ここは十和田先輩に話を振るか
「ところで、先輩はD・PRGで戦闘ってできますか?」
「突然どうしましたか。まあ、苦手ですけど嗜み程度には」
「いきなり不安な発言やな~。警備隊って喧嘩は日常茶飯事やろ」
「私、事務とか営業所の受付担当でしたから。じ、実はあまり実戦経験無くて」
「ちょ、ちょい待て!なんでそんな奴がここに来たんや。ほんなら隊長を連れてきおんかい!!」
「ひうっ!?そ、そんなに強く言わなくても」
「こっちはダチの敵討ちなんや。お遊びでやっとるんやないんやで!?」
「ご、ごめんなさい――!!」
あまりにも自信の無さと、こちらを不安にさせる物言いについキツイ口調で言ってしまった。十和田先輩は涙目になってしまった。
美夏とヒメルが責めるように言い寄ってきた。
「仁、言いすぎよ」
「そうだよ。もっと優しく言わないと」
「せやけどな。戦力外な上にお荷物が増えると」
「・・・・・・・・・・・・お荷物・・・・・・」
「ああっ!先輩、すいません。コイツ口が悪くって。こら、仁謝りなさい!」
「・・・・・・いいんですよ・・・・・・」
すると十和田先輩はその場で膝を抱えて座ってしまう。そして呪詛のようにブツブツと・・・・・・
「あ、あの~先輩?」
「・・・・・・だって隊長が行けって言うんですよ。私じゃ無理ですよって散々言ったのに最後まで責任もって奴らに協力しろって言うんですよ?でも私みたいなおっちょこちょいが行ったって足手まといにしかならないに決まっているじゃないですか。それが分かってて送り込むとか。隊長って実は私のこと嫌いなんじゃないのか?私を行かせたのだって実はターゲットに殺されるのを期待して・・・・・・」
「美夏。どないしよう」
「どないしようじゃないわよ。どうすんのよ」
「たすけて~」
「しらない!」
頼みの綱の美夏がそっぽ向いて準備体操に戻ってしまった。頭を抱えて天を見上げる・・・・・・だ、ダメや。今回、マジでダメかもわからん。
改めてこのメンバーを見渡す。
卑屈モードの十和田先輩。体育座りで押し付けられた胸が大変エロスを醸し出しています。
一人、妄想の世界へトリップしている須藤さん。あのにやけ面がなんともだらしない!全く、これはフィルムに収めなきゃいかんな
そして、5メートルくらい離れて準備体操中の美夏。正拳突きや前蹴りをしているが風切音がここまで聞こえきた。なんとも頼もしい限りや。
「そして恭弥のいないというこの有様。はぁ」
「元気出して、仁君」
「・・・・・・おおきにな、ヒメル」
せやけど一番の問題児はお前なんやけどな。けど本人に直接言って、先輩コースに突入されても困るので、ここは口をつぐんだ。と―――――
一迅の風が吹きぬける。
「・・・・・・おい、お遊びはここまでのようやで」
砂を噛む音が聞こえる。ザッザッと規則的な音がだんだんと大きくなっていく。
そして―――白衣を棚引かせた蒼髪の少女が目の前に現れた。
☆
作戦としては、まずは交渉からだ。勝率が高くない限り出来る限り戦闘は避けたいとのこと。だから交渉人としてヒメルがメアを説得する事になったんだけど、メアの姿を見たとき、ヒメルはちょっとおかしいと思った。
・・・・・・基本的に無表情だから分かり辛いけど、メアと何年も暮らしているヒメルだからこそわかる・・・・・・メア、なにかおかしいよ
目の下にわずかなクマ。それに、すこし焦ってる、のかな?いつもの余裕さを感じられなかった。
「メア・・・・・・」
「ヒメル・・・・・・帰りますよ」
「メア・・・・・・どうしたの?なんでそんなに疲れてるの?」
「関係ありません」
「でも、今のメア、すごく辛そう・・・・・・焦ってるって言うか、追い詰められてるって言うか・・・・・・」
ピクッと眉毛が動いた。そこを除けばいつも通り、クールでドライな言い方。けれどこの仕草で確信した。
「あなたを追って研究区画を出てからまともな睡眠を取っていませんでしたから。そのせいでしょう」
「ううん。それとは違う、何か別の精神的――――っ!!」
「ヒメル!」
メアが投影し銃を構えた。それと同時に美夏と仁君がヒメルを守るように動いた。ふと見ると、愛さんはレイピアを投影して、十和田先輩もスマートフォンを片手にD・PRGを展開していた。
緊張が走る。
「言いたいことはそれだけですか?」
「ああ、恭弥の仇、とらせてもらうで」
「待って!!仁くん!」
「おっぱじまるで!ヒメル、ワイの後ろに隠れろ!」
「メア!話をしてよ!!」
ヒメルの声は届かなかった




