↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日給10万の闇バイトに応募したら異世界のダンジョン攻略配信者として閉じ込められた  作者: 夏草枯々


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/27

13.ステータス画面

 既に少し懐かしさすら感じる草原に出た。

 指定されたクエストポイントは城壁の近く。確かこの辺りには薬草が生えているポイントがあったはずだ。


「なっ!?」


 そこにいた青い三角巾をつけた人物に目が止まる。

 城壁に手を添わせて歩くメリーブだった。


「なんで……」


 俺は彼女に駆け寄った。

 ここはモンスターが普通に出る場所だ。

 レベル1の頃、この辺りでウィスプと戦った記憶もある。


「異世界人さん……あのっ、この辺りで店主、いえっ父を見かけませんでしたか」


 彼女は俺を見つけると縋り付くように喋りかけてきた。

 服の袖を強く引かれると同時になんでこんなところにいるんだ、と怒りに似た感情が湧き上がってくる。

 グッと奥歯を噛み締め、感情の発露(はつろ)を堪えた。死んでいたかもしれないのに。せめて知り合いか誰かを呼ぶべきだと思う。

 ふと見えた彼女の目は既に赤く、涙によって腫れていた。


「……見てない」


 俺は首を横に振った。

 彼女がただ必死だったことも分かる。


「そう、ですか。すみません。ここら辺で見かけた人はいなくて、もっと奥までいっちゃったのかも。お店に出す薬草の採取で外に行くんですけど……どこまで取りに行ってるかは知らなくて」


 彼女が俺の服の袖から手を離し、一歩下がって俯いた。


「奥、ってことは森か」


 顔を上げる。

 今日の天気は濃い曇り空で鬱蒼(うっそう)と繁った森に霧がかかっていた。視界は悪そうだ。


「そう……ですよね」


 ふらりと彼女は顔を上げ森を見つめ、駆け出した。

 草原の中、背の高い草を掻き分けて進んでいく。


「待て待て待て!」


 俺は彼女の前に走り込み、手を広げて立ち塞がった。

 武器を持っているようには見えない。それでモンスターだらけの森に挑むなんて無茶苦茶だ。


「退いてください。自分でも無茶なことをしていることは自覚していますから」


 彼女が睨む。発した声は怒りからか僅かに震えていた。


「優しさとか興味だけで近付いてこないで!」


 大きく手を横に振った。

 全てを撥ね付けるような声が草原にこだまする。

 俺は怯んだ。

 こういう一陣の暴風に見舞われる瞬間が苦手だ。


「一緒に探す、じゃあ……ダメなの?」


 視線が宙を彷徨った。

 やけに浅く踏み込んだな、と我ながら思う。


「……ダメじゃないです。行きましょう」


 彼女は俯いたまま俺の横を通り過ぎていった。


 森への道中、何度かモンスターに絡まれたもののダンジョン内のもっと高レベルのモンスターすら一撃の超大剣に倒せない相手などいなかった。

 森のステージに入る。やはり霧が立ち込めていて、濃い土の匂いがした。視界も悪く薄暗い。

 視界の端で勝手に盛り上がるコメントに向けて、


「みんな薬草の場所を教えて」


 と声をかけた。

 すぐに複数の候補が出てきた。絞れる要素は思いつかない。仕方ない、近いところから順番だ。


「こっちから」


 俺は行きたい方向に指を差したままメリーブの方に振り返る。

 彼女は立ち止まったまま無言で頷いた。息が切れているようだ。

 それなりに歩いた。そもそも現地人とは体力が違うのかもしれない。


「ん」


 彼女の隣に少し屈んで肩を向ける。

 いらないのなら、それでいい。ただ一緒に行くと決めたのなら相応の行動は見せるべきだ。

 幸い、メリーブは何も言わずに肩に腕を置いてくれた。


「………」


 彼女は隣で声を出さずに泣いていた。

 手で目元を拭いながらも足は前に進み続けている。

 俺は彼女から目を逸らし、目的地の方を見た。


「あっ」


 落ちた枯れ葉の中に倒れている人がいた。

 白い髪の頭が見える。


「お父さん!」


 彼女が駆け出し、俺も後に続く。

 どうだ。間に合ったのか。


「っ!?」


 咄嗟に超大剣を抜き放つ。

 視界の端から何かが飛んできたのだ。


 俺のHPが3割ほど飛んだ。

 シュルシュルと滑らかなツタが地面を這う。


「こいつ……」


 霧の中から飛び出してきた先に『食人花ランドス』はいた。

 HPバーが上部に伸びる。

 一見、巨大な白い蘭(ラン)のようにも見えるその植物には目があった。

 白色の霧のようなものがランドスに向かって集まっていく。


「させるかよ」


 初撃必殺の効果がのった超大剣はランドスに生えた4つのツタのうち2本を切り飛ばした。一撃でHPの半分近くを削る。


「お父さん! お父さん!」


 背後からは叫ぶようなメリーブの声が聞こえてくる。

 最悪の結末が頭をよぎり、飛んできたツタを避け損ねた。


「なっ……」


 さらにランドスの攻撃は続く。

 溜めていた白いモヤを周囲に放った。

 それを食らった途端、体が重く、瞼が落ちそうになる。尻もちをついた。


 ──眠気のデバフか。


 枯れ葉に手をつく。俺が動けなくなると2人とも本格的にやばい。

 連れて逃げろ、と伝えるため後ろを振り返る。


 どうせ俺は生き返るから──


『死亡』


 メリーブのお父さんのステータス画面が表示されていた。

 現地人、レベル1。死亡。

 ステータス画面は残酷だ。


「クソが……」


 終わりの無い俺たち(プレイヤー)には存在しないステータス。

 既にメリーブのお父さんは死んでいる。

 メリーブは父の服をシワが寄るほど強く掴んでいた。服越しに啜り泣く声がくぐもって聞こえる。


「……邪魔」


 俺の体に穴が空く。ツタが腹部を貫いていた。

 腹から這い出ていくツタの感触。テラテラと赤黒い血に染まったものが枯れ葉の中を這っていく。


 ──痛い。


 眠気のデバフのせいで未だ意識は朦朧(もうろう)としている。真っ直ぐ歩くことすら難しい。

 超大剣を杖のようにして立ち上がりランドスに向けて歩く。


「俺はやっぱりプレイヤーなんだなぁ……」


 超大剣の刃がランドスの体に沈んでいく。

 4つのツタをなくしたランドスは緑色のオーラを体にまとった。みるみるうちにHPが回復していく。


「………」


 振り下ろした3発目の攻撃によって『食人花ランドス』のHPバーが無くなりドロップ品に変わった。


 ──こんなに嬉しくないドロップ品は初めてだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。