第26話
「俺さ、ドラッグストアの息子なんだ。」
言葉の意味が分からず、ぽかんとしてしまった。あと、麺が伸びないかちょっと心配だ。
「あ、すまん。言葉が足りなかった。ドラッグストアの社長の息子ってこと。」
「ああ、そういうことね。」
いや、どういうことなのだろう。あと、麵が伸びないか心配だ。
「最初に結論から言うと、後継ぎ問題で若干微妙な気持ちになってる。俺前にも言ったかもだけど二人兄弟でさ、どっちかが後継ぎになれって言う話をされたんだ。」
「なるほど。」あと、麵が伸びないか凄く心配だ。
「昨日の夕食、親父が珍しく帰ってきてて、食べた後裕二と二人で部屋に呼ばれてさ、あ、裕二は俺の弟。一個下。んで、何となく察しがついてはいたんだけど、その話をされた。」
「うん。」真剣な話なのでここは麵の心配は後にしよう。面と向かって話をすることに集中しよう。
「んで、俺ら二人とも割と社長に興味なくてさ、高梨ドラッグって一族経営じゃん?だからいずれこの日が来るんじゃとは思ってたんだけど、なんか俺がやる流れになりそうなんだよね。」
「やりたくないんだ?不本意だったら悪いけど、恒一周り見れるし、そういうの向いてるっていうか、できるんじゃないかなって俺は思うけど。」
「あ、ありがと。まあみんなと一緒に何かやるってのは楽しいんだけど、うちのさ、高梨ドラッグってあんまそういうかんじじゃないのよね。」
恒一とは1年も2年もクラスが一緒だった。いつもクラスを引っ張っていく存在だった。体育祭や文化祭などでは大活躍で、クラスのみんなに慕われていた。
んん?高梨ドラッグ?時間差で気づいたが重要な情報を流してしまっていた。
「そういえば高梨ドラッグって、あの?」
「うん、多分みんな知ってるやつ。CMもテレビだけじゃなくてネットにも流してるから、身内自慢じゃないけど知らない人いないんじゃないかな。」
「おお、まじか。」
高梨ドラッグは全国規模のドラッグストア、というか業界最大手の企業だ。この辺りにある大量にあるドラッグストアの約4割が高梨ドラッグである。てか、やばいな。改めて聞くとすごいな。
「てか、リアクション薄いな。もっと驚かれるもんだと思ってた。」
「いや、結構驚いてるよ。」
「え、そうなの。お前のリアクションようわからん。」
なんか恒一が深刻そうな感じだったので変にリアクション大きくするのも違うかと思った。
「メディちゃんかわいいよね。あれって神様みたいな設定なんだっけ?うちの妹が好きらしくて、いつも家の中でCM歌いまくってて俺もう若干洗脳されてる。」
メディちゃんというのは高梨ドラッグのイメージキャラで、結構今風なデザインだ。有名な絵師が書いていて、普通にかわいい。
「まあ、メディ神は依存性高めにしたからね。」
「なるほど。摂取量は守らないと危ないね。」
「あと、別に隠すことないから言っちゃうけどあれ提案したの実は俺。なんか親父が若者受けいいのやりたかったらしかったんだけど、色んな形状の薬繋ぎ合わせてロボットものみたいにしようとしてて、そのデザインがあまりにもサイケデリックっだったんよ。だから、かわいい系のほうがいいんじゃね?って親父に言った。」
「急にCMとか広報の毛色変わったと思ったらそういうことなんだね。」
「あ、裏設定でメディちゃん変身すると例の姿になるよ。そのCM、不気味すぎて問い合わせ来たらしくて途中で放送自粛したらしいけど。」
そこまでなのか……。逆にみてみたいな。
「ってか、俺そんな話聞いちゃっていいの?あと、他の人は恒一がそうってこと知ってる?」
「いや、言ってない。ごめん他の人には黙っててほしい。流石に規模が規模だからちょっとね。」
「ああ、わかった。信頼にはこたえたいと思ってる。言わないようにするよ。」
「考えなしに食堂で話しちゃったけど、結人のリアクションの鈍さに助けられたな。大声で「お前、高梨ドラッグの社長の息子だったの!?」とか言われてたらやばかった。まあ、なんとなく結人がそういうことをしないって思ってたからここで話しちゃったのかもしんないけど。ははっ。」
ちょっと恒一の顔に余裕が出てきた。あと恒一もラーメン自体はおいしく食べたいはずだ。話も区切りはいいとは言えないが、一段落はついたので切り出すならここだ。
「ご麺っ!伸びてない?待ってるから麺だけでも食べたら?」
麺がダブルミーニングになってしまった。ごめん。しかし、凄いな。高梨ドラッグの歴史は長く、伝統が綿々と受け継がれているのだろう。そんな凄い血筋の人と面と麺を向かいあわせて話しているのか。
でも、恒一は恒一だ。一人の友人として話をちゃんと聞いて、少しでも恒一の役に立てるように頑張ろう。相手を真っすぐ見なければ。
「……。俺としたことが!」
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