39/41
十八日目・後編
「正しい。」
「だが、簡潔すぎるな。」
ヴェリアの眉がピクリと反応する
「もう少し、余裕を持て。」
ヴェリアは唇を引き結ぶ。
「余裕など」
「持ってどうなる?」
ヴェリアの視線が男を刺す。
「どうやら言葉を間違えたらしい。」
男は肩をすくめる。
男は続ける。
「なるほど」
「確かに君らしい答えだった。」
「傷つけたのなら詫びよう。」
そう言って男は軽く頭を下げる
ヴェリアの目が開く。
沈黙。
地下牢は静かで、水音だけが遠くで響く。
男は紙をまとめ、椅子を押して立ち上がる。
「今日はここまでにしよう」
鉄の扉が閉まる音。
椅子が地面に擦れる音
足音が遠ざかり、止まる。
男は振り返らず言葉だけ置く。
「君を害するつもりはなかった。」
足音が遠ざかり
やがて
消えた。
ヴェリアはしばらく動かない。
鎖が微かに鳴る。
腕の動き。
肩の角度。
視線の止まり方。
偶然ではないことを知る。
それとは別に彼の言葉
「害するつもりはない」
謝罪。
短く息を吐いた。
「……何だ急に」
ヴェリア目を閉じ思考に集中する
ペンの持ち方
紙の抑え方
力のかかり具合
謝罪
「……チッ」
思わず舌打ちが出る。
思考がまとまらない。
「……もういい」
彼女の苦悩を石壁だけが聞いていた。




