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十八日目・前編
今日も足音はゆっくりと
確かめるように階段を下る。
ヴェリアは顔を上げた。
「来たか。」
男は歩を進める。
足音は一定だ。
椅子を引く音。
腰を下ろす。
紙を机に置き、ペンを手に取る。
男は小さく肩をすくめる。
「昨夜は」
「よく眠れたか。」
ヴェリアは肩をすくめるだけ。
「変わらん。いつも通りだ。」
男はペン先を紙に落とす。
右手の動きに、わずかな硬さ。
ヴェリアは視線をそらさず、手元を追う。
沈黙。
「君は」
男はゆっくりと顔を上げる
「緊張を楽しむか。」
「たまになら。」
男は微かに笑った。
「では冗談はどうだ。」
「戦場の外では使ったか。」
ヴェリアは質問の意図を探る。
まだわからない。
「少しは。」
ヴェリアは一呼吸置いて
返す。
ペン先を紙に置いたまま、男は軽く肩を揺らす。
明らかに纏っている空気が違う
何だ、コイツは。
ヴェリアは目を細める。
男は小さく咳払いをし
また口を開く。
「それでも」
「どうして戦い続ける。」
ヴェリアは少し視線を落とす。
「生きるためだ。」
男は軽く笑う。
微かに肩の力を抜いた。




