37/41
十七日目・後編
男は紙をまとめる。
左手で持つ。
右手は机に触れず、わずかに浮かせている。
ヴェリアはじっと見つめた。
背中ではなく、手元を。
不自然な動きを確認する。
「今日はここまでだ。」
男は立ち上がる。
椅子を戻す。
ゆっくり。
歩き出す。
ヴェリアは鎖を軽く揺らしながら小さく息を吐いた。
目はまだ男の手元に残る。
わずかな不自然さを確認するように。
「……もう少しだけ、聞いていいか。」
小さく呟く。
男は立ち止まる。
振り返りもせず、低く答える。
「何だ。」
「いや、手の…動きが、気になる。」
ヴェリアは視線を下げずに言う。
「……それは終わった。」
男は淡々と、歩みを再開する。
ヴェリアはしばらく黙ったまま見つめる。
鎖の音だけが静かに響く。
やがて一人になり、壁にもたれて考えをまとめる。
右手の動き。
腕のわずかなぎこちなさ。
視線の止まり方。
どれも偶然ではない。
小さく息を吐く。
「……終わった。ね。」




