5-11 新たなる脅威
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ウェリスたちフェイリックス騎士団にも異変が立ちはだかっていた。
突如として地中から這い出てきたものは、おどろおどろしい異形の化物だった。
ヒトでも獣でもなく、蛞蝓や蛸のような軟体生物に近い外見をしており、巨大で歪な土留色の球体のいたる箇所から肉厚で長い触手が無数に生え、怖気を誘うように不気味に蠢かせている。
球体の直径は五米程だろうか。それは心臓の鼓動のように収縮と拡張を繰り返し、同時に濃密な魔素を撒き散らす。目を凝らしてよく見ると球状の上部に横長の空洞がある。それには赤黒い岩がびっしりと詰まっており、その穴から瘴気を吐き出しているようだ。
そして、空洞から牛のように低くくぐもった呻き声のような音が発せられる。その時に気付いた。
あの裂け目は、口だ。つまり、土留色の球体の正体は生物の頭部そのものなのだろう。
ヒトで云う額の上の辺りに真一文字に裂け拡がった巨大な口だけがあり、目や鼻、その他本来顔に付随する要素は何一つない。
掛け値なしの化物。こいつを前にしては小鬼や魔狼が群れをなしていても可愛く思える事だろう。
この場にいる騎士は自身を含め十三名。その誰もが息を呑み、経験のない未曾有の恐怖で身体を硬直させている。
念の為にパルウァエ森林へ侵攻する団員には魔素除けの魔装具を支給してはいるが、その程度ではカバーしきれない濃密な魔素の中でこれを相手にするのは困難だろう。だが、俺達は聖国の騎士だ。護国の為に殉ずる覚悟と矜持と責務がある。
「おい、赤の発煙弾を撃て」
「え?あ、了解しました!」
隣で顔面を蒼白にし腰を引いて震え出していた団員に信号弾の発射を指示する。本当は使いたくはなかったのだが、背に腹は代えられないし、万が一俺達がこいつを仕留められなかった場合に被害を抑えるよう状況を伝える必要がある。
上空で破裂し赤色の煙幕が拡散する様子を枝葉に覆われた空の隙間から確認し、大きく一度息を吸う。
「きばれよお前たち!フェイリックスの命運が掛かっている!得体の知れない化物程度に気後れするな!」
大音声でこの場の騎士たちに発破を掛ける。それまで縮こまっていた騎士の一人、また一人が一様に呼応し剣を抜き掲げ、同じように大声を出して奮起しだす。
全く、愛国心の強い者たちばかりで鼻が高い。
俺も剣を抜き、いの一番に化物へと向かい駆け出した。




