5-10 続行
木々の枝が空を遮りよく見えないが、赤い煙が発せられ風に流されていることだけは分かる。
「救援信号ですう……」
おろおろと動揺しながらジニアが消え入りそうな声で呟くように言う。森林へ侵入する前に説明していた信号弾のことだろうか。
救援ということは赤色の煙の意味は穏やかなものではなく、先に突入した騎士達の身に何かが起きたと想像に難くない。
「助けを求めて、というよりは外部に緊急性を伝えたい意図でしょうね。森林区域内で発煙地点の特定は至難ですから」
樹木の密生する場所ではそうだろう。ここも例に漏れず自然が繁茂するが、あの異常個体の化物が暴れて倒壊したポイントから運良く確認出来たに過ぎない。
「ジニアはナナシさんを連れて森林の区域外に出てください。魔獣と遭遇した際は応戦は控えて。私はルキさんを追います」
ルキを、追う?
辺りを見渡すと、彼女の姿は見当たらなかった。
「恐らく、信号弾を撃ったのが団長だと考えたら体が勝手に動いてしまったのだと思います」
「それにしたって無鉄砲というか向こう見ずというか……」
「ルキさんは団長の事となると見境がなくなってしまいますから。父親なので仕方のない事なのですが」
……ちちおや?
「誰が?」
「ウェリス団長です」
「誰の?」
「ルキさんの」
あのチャラい印象の破落戸のような青年が、一児の父?それもあんな大きな娘さんの?いくらなんでも年齢不詳が過ぎないか?童顔とかそんなレベルではない。
「この話はまたお会いした時にでもいたしましょう。緊急事態である事に変わりありません」
「いや……今の話で少し正気が戻ってきた。俺も同行する」
シグニスに担がれていた腕を解き、自立してまだ動ける事をアピールする。正直、まだ酩酊したように視界が揺れている。だが吐いた事と今の話でいくらか冷静になれたのも事実だ。
「……貴方も大概無鉄砲だと思いますよ」
「で、でも、人数を分散させるリスクよりも、纏まって行動した方が安全なのは事実ですう……私ひとりでナナシさんを守りながら森を出る自信もありません……」
「ジニアはもう少し自信と騎士の自覚を持ってください」
結局シグニスが妥協し、三人揃ってルキを追い森林の更に奥へと向かうことになった。




