表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/28

5-5 突入

 キャリッジが停車し外へ出ると待機していた騎士風の男が駆け寄り、ルキに何か伝えている。

 風、というのはその男は騎士印が施された帷子を着用してはいるが鎧や兜はなく、武器も装備していない。極めて軽装であり、丸耳族で魔装具の所持もなさそうな事から魔法での後方支援役という線もなさそうだ。

 「彼は附属員です。緊急事態で猫の手も借りたいくらいに人員が足りておりませんので、非戦闘員も伝令や偵察の補佐をしてもらっています」

 不思議に思っていた事が表情に出ていたのだろうか。シグニスが柔和に俺に話しかけてきた。

パルウァエ森林は総面積約三百平方(キロメートル)の自然林であり、フェイリックス領で最も広大な土地を有する原生林だ。その周辺を一定間隔に騎士団に所属する者が配置されこの附属員の男同様の役割が与えられている、と加えて教えてくれた。

 「だが侵攻する騎士達へはどう連絡を取るんだ。あ……取るのですか?」

 「お気になさらず。気軽にお話いただいて構いませんよ。連絡手段はいくつか方法があります。ひとつは信号弾。専用の短銃で上空へと射出し煙幕を発生させる装置です。煙幕には色素を取り入れ、その種類で意味を判別出来るようになっています。もうひとつは緊急用の通信巻物(メッセージスクロール)です」

 そう言って懐から取り出したのは魔法陣が記された巻物(スクロール)。四、いや五重に術式が組まれた複雑なものだ。

 「現代魔法も日進月歩研鑽され、この巻物もその成果のひとつです。尤も、魔法式も製法もかなり特殊で生産量がとても少なく、これひとつで私の月給何か月分もある非常に高価な代物ですので、使用した際は報告書を提出しなければいけないのが玉に瑕です」

 魔法陣を書いただけ……という訳ではなさそうだ。通常、巻物には羊皮紙を使用して作成されるが、用紙そのものが魔力を帯びている。

 本来巻物とは魔法発動の簡略化、或いは記された魔法式を即座に展開する為の補助道具である。巻物単体では効果は発揮せず、別途使用する為に魔力を消費しなければならない。詰まる所、基礎魔力が少なく魔法と縁遠い丸耳族には無用の長物でしかないという事。それを彼らにも扱いが可能となっているとすると高額なのも頷ける。

 「そんな貴重な物なら使わなくてもいいように人海戦術で対策できなかったのか?」

 気にしなくて良いと言われるがまま、普段通りの口調でシグニスに尋ねる。

 「そうしたいのは山々ですが先程も言ったように我が騎士団は人員不足にも悩まされておりまして……それに冒険者や自警団の方々に協力を仰いだとして、突入部隊を多く投入しすぎても暴動の引き金になりかねませんから。パルウァエ森林は特定自然保護に指定された国有林ですので焼き払ったり意図的な破壊活動も原則禁止されていますからね」

 「暴動が起きそうで、更に異常個体が発生していてもか?」

 「原則、です。無論、人命が最優先事項ですよ。ですがこの危機を脱した先に他国から責を問われてしまっても国家が貧してしまう事態となりましょう。そこも配慮しなければならない、というだけです」

 「つまり、この状況を打破する力が聖騎士団にはある、ということか」

 当然です、とシグニスは頷く。

 国際間の取り決めや規約とやらを俺は知り得ないが、そういった面倒事や厄介事を国の重鎮やその従者は抱えているものなのだろう。軍事を取り纏める騎士団はそういった面も考慮し動かなければならない。一介の冒険者に過ぎない俺とでは背負う責任も使命感も比べ物にならないに違いない。

 「あのう……ご歓談のところ、も、申し訳ないのですが……」

 おどおどと両手の人差し指をこねくるように突きながら申し訳なさそうに俺とシグニスの間に割って入るのは……ジニア、だったか?鬱陶しいほどに前にも横にも後ろにも長い毛髪が兜の彼方此方からはみ出し、恭謙で内気な雰囲気の分厚い透鏡の眼鏡をした女性騎士だ。

 「どうしましたジニア?」

 「えっと、お、お二人がお話しているあ、間に……そ、その、ルキさん、もう、森の中に……」

 腕を折り畳み小さく指をさす方向には、確かにルキの後ろ姿を僅かに視界に捉えることが出来た。

 三人で顔を見合わせ頷き、取敢えず独断専行で行動を開始した今回の作戦の仲間の背中を追うために走り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ