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3-4 報告演説 Side-ティティ

 依頼を終え、冒険者ギルドに報告と報酬の収受を済ませて外へ出ると中央広場に人集りが出来ていた。

 群衆の整備にあたっているのは聖教の僧侶と自警団、騎士団までも動員されている。凡そ只事ではない。そういえば数刻前に聖教の関係者や騎士団が慌忙と馬車で東の正門を抜けていったと民衆の雑談をここに来るまでに何度か耳にしたが、それに関係しているのかもしれない。

 その中心に並んで佇む人の姿が見える。ムスター大司教猊下と不浄の巫女様、そして何故かあの記憶喪失の露出魔だった。

 目を疑い指で何度か目を擦って再度確認したが間違いない。どういう取り合わせだ?まさか、何か不敬をやらかしたのだろうか。確かにあの男は変質者だし少し常識に欠ける間の抜けている所があったが、誠実で人情味のある奴だ。自棄を起こして暴挙を働いた、なんて事はないだろう。多分。きっと。

 あの男が同席する理由に思いを巡らせていると、拡声の魔装具を使って大司教猊下が演説を開始した。響き渡る声に中央広場の騒めきが鎮静化していく。

「この度、ここフェイリックスの近郊に位置するパルウァエの森林で瘴気の発生を確認いたしました」

 その言葉で再度響めきに火が付いた。近隣で不穏当な事件が起きればその不安や驚愕は当然だろう。

 瘴気災害は近年より品同を増し活発化している。各地で被害の報告が毎日のようにあがり、重傷者や死者も後を絶たない。ここ二十年で国の壊滅こそはないが、小さな町や村程度では同等の被災があったとも聞く。

 「だがご安心ください!」

 大きく張った大司教猊下の一声で民衆の動揺が徐々に収まる。周囲を見渡して一度だけ頷くと言葉を続けた。

 「今回の件は発見も早期であったこともあり被害の報告もなく、既に巫女様のお力で浄化に成功しております。避難勧告も発布せず、これまで通りに生活を続けて問題ないと判断しております。この場を設けて皆様にお聞きいただいているのはそのご報告の為でございます」

 高らかに告げられる言葉に歓声と拍手の喝采が響く。なるほど、状況の報告を兼ねた聖教、延いては自身の評価を高める為のパフォーマンスといった所か。強かな男だと感心してしまう。

 となると、益々あの男があそこに立つ理由が分からない。なんだか落ち着きもないし、挙動不審っぽいし。

 ムスター大司教猊下は聖教を讃える声を制止させ、講演を再開する。

 「皆様のご厚情賜りました。して、此度の瘴気被害を最小限で収める事が出来たのは、巫女様の隣におられます冒険者のナナシ殿のお力添えによるものでございます」

 ……はい?

 「ナナシ殿は偶然に件の森林に立ち寄り、そこで瘴気の発生する根源を発見し対処に成功。新たな流入を封じたことにより巫女様の浄化も恙なく執り行えました。どうか、この立役者様にも称賛をお与えください!」

 一際大きな歓声と万雷の拍手。まるで祭りのような喧騒。

 あの変質者が功労者。いや、別に疑っている訳ではないが不思議と表現し難い複雑な心情を抱いている、気がする。あいつを廃品集積所で見つけてからたったの一日。それだけで聖教の重鎮と肩を並べる程の功績を立てるまでの経緯は分からないが、案外凄い奴だったのかもしれない。

 そうこう思っていると、ベールで顔の上半分を覆った巫女様があの変質者の腕を引き寄せ、抱き着いてみせた。

 ……なんだろう。どうしてかは本当に皆目見当つかないのだが、無性に腹が立つ。

 私は異性に興味がない。噓でも強がりでもなく、男という存在を軽蔑しているといって過言ではない。だからこの感情は浮ついたものでは決してない。だからこそ、苛立っている自分自身に更に苛立ちが重複していく。

 どうやら冒険者にはなれたらしいし、そう遠くないうちに話を聞く機会くらいあるだろう。その時に少しだけ問い質してやろう。

 ささくれ立った気持ちの名前を分からないまま、取敢えずは酒で気分を誤魔化そうと足早にその場を去ることにした。

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