第25話:体育会系女子たちの集い
蛍ちゃんは、工場の裏手の斜面に埋めた。
俺が掘り、春と夏子が土をかけていく。
小雪は傷があるから見ている。みんな無言だから俺も。
雪が降り始め、蛍が白く覆われて綺麗な景色の一部となる。
墓標は要るかなって聞いてみたら、春が「お願いします」と言ったので、工場にあった鉄板を切って立てて墓標にする。
名前だけ彫った。名字は必要ないだろ、聞いてないしな。
それで埋葬は終わり。
俺は、あの光や恐ろしい存在知ってるからなあ、今ではどうしても、神や仏とかに手を合わせる気持ちにはなれないんだわ。
女性陣は、各自手を合わせているけどな。
墓に女性陣はその後もちょくちょく行ってるみたいだ。
水とかもって週に一回か二回。
それで気持ちの整理や出きるなら、墓作って正解だったな。
* * *
で、気が付いたら二ヶ月経ってたよ。
長いようで短いようで、まあ、いろいろあったねえ。
* * *
まず小雪が、思ったより早く回復した。
二週間で歩けるようになって片足庇いながら銃を構えてる。
「まだ無理だろ」って言ったら「無理だと思えばできないの、やれないじゃなく、やるのよ」って返ってきたんだよ。
おーう、昭和の体育会系、パワハラのノリじゃないですか。
女子の方が意外にそういうの残ってるもんな。根性あるし。
根性のない俺は、厳しい顔してる小雪からそっと離れた。
で、動けるようになった途端に、当たり前のように春と夏子を鍛え始めたんだよ。さながらハートマン軍曹のようにね。
「立ち方から。そこに並べ。」
初日の第一声がそれだったもんな。
春と夏子はポカーンで、俺はそっと裏山に逃げた。
構え方、握り方、リロード。マガジンの入れ方から、弾詰まりの直し方まで。最初は的にすら当たらなかった二人が、一ヶ月で立射でそこそこ当てるようになってきたんだよね。
言われた訓練を出来なくて、小雪に素手で殴られてうずくまっていた彼女たちは、今では銃床で腹を殴られても「ありがとうございます!教官!」って叫んでる、ちょっと怖いよ?
夏子が意外と筋が良いみたいだ。
「アタシ、これ向いてるかも」
とか言いながらケラケラ笑って撃ってる。撃ちながら笑うなよ。
ほら、後ろに小雪いるぞ?殴られたよバカだなぁ……
春は逆に、丁寧すぎるくらい丁寧だった。
一発撃つたびに確認して、また構えて。
小雪が「遅い、死にたい?」って何回も蹴ってたわ。でも二ヶ月経つ頃には、その丁寧さがそのまま安定に変わってた。
銃だけじゃない。車の整備も教えてたな。オイル交換、タイヤ交換、バッテリー上がりの直し方。
「車が動かないのは死ぬのと同じよ」
小雪がそう言ったら、二人とも顔つきが変わってた。あの人、教えるの上手いね。
というか小雪って知識は広いし、指導も体育会系ってだけじゃなくて、ちゃんと長距離や筋トレの合間にインターバル入れたりと、そこを超えた根性が必要なところを分けて鍛えてる。
ひょっとしたら、すげえ教官なんじゃないか?
俺も教わればいいんだろうが、辛そうだし嫌です。
で、途中から小雪が二人を連れて街に出るようになった。
半グレ狩りのために。
二人はいくら訓練しても、いざという時に引き金を引けないかもしれん。というか目でも合ったら引けないだろうね。
だからついて行って殺しを実地で経験させる。OJTかよw。
俺はそれも含めて自分で決めりゃいい、撃てなきゃ死んでも仕方ないと思うタイプだけど、小雪はああ見えて優しい。
身内になったら情が深いタイプなんだろうね。
初めて撃った日、帰ってきた二人の顔が真っ青だった。
小雪は「上出来よ」とだけ言って、後は何も言わなかった。
その夜、二人が蛍ちゃんの墓に行ってたのは知ってる。何を言ってたのかは知らん。聞く気もないしね。
二回目からは、少しずつ顔色が戻ってくる。五回目くらいには、帰ってきて普通に飯食ってたわ、ガッツリとシカの焼肉を。
人間って慣れるんだよな。俺が言うのもなんだけどね。
* * *
その間、俺は何をしてたか。
まず、収納を空にした。
考えてみりゃ当たり前の話。
十メートル四方しか入らんのに、中に前から入れっぱなしの物が半分以上あったんだよ。
要る物だけ選び直す、その上で足りないものを調達する。
……俺、この能力を三ヶ月も雑に使ってたな。
もう隠す気も無いし、遠慮なく調達に使わせてもらう。
まず建機を拠点と収納に。
墓を掘ってて「ユンボ欲しい」と思ったのを覚えてたんだよ。
で、工事が途中で止まった現場に、バックホウが二台放置されてる。誰も取りに来ないんだろうな。世の中こんなだし。
大きさも一台は普通だけど、もう一台は小さくて収納のコンテナ仕舞った隙間に入りそうなケツが小さい丸いのだ。
見える範囲だから、フェンス越しに――スッ。
ついでにその隣のフォークリフトも。
悪いな。まあ、放置されてたのが悪いってことにしとこう。
次にガソリン。
閉鎖したスタンドがそこら中にあるんだよ。人が逃げて、店を閉めて、そのままのやつ。
で、あれ地下タンクなんだよな。
閉めた時、中身が空とは限らんよなあ
売る人間がいなくなっただけで、残ってる方が多いんじゃね?
やってみた。地面越しに、タンクの中身を見る――というか、そこにあると分かってる場所に狙いを定めて。
――スッ。お、入った。
三軒回って、相当な量になった。
これ、内地行っても当分ガソリンに困らんぞ。
俺は空いてるドラム缶を探してはガソリンを移し、改めて収納していく。途中で見つけた工場にあったドラム缶が大量にあったから何百本もガソリンを詰めて、放置されていたガソリン配達のローリーにも、ガソリン詰めて工場に帰る。
……いや、待てよ。
この使い方、あの声に怒られないか?
「器を弁えろ」って言われたのは収納の容量の話だったよな。うん。容量は守ってる。守ってるから大丈夫だろ。たぶん。
* * *
あと、ランクルを一台とトラックなんかを作る。
春に置いてく車だ。街から引っ張ってきて、工場でバラして組み直す。
これがまた楽しいんだよ。
まずフロントガード。俺のと同じやつを溶接する。鉄骨から切り出して、シャーシに直付けだ。
次にサイドウィンドウのガード。これは脱着式にした。普段は外しといて、いざって時に付けられるやつな。
この辺りの装備は、ユニック付いた二トンや、軽トラもだ。
荷室にガンロッカーを溶接する。鍵付き。中に仕切りを入れて、長物と弾薬箱が収まるようにした。
「ランクルにシュノーケルは……要るかね」
要らんだろ。北海道で川渡ることないわ。
……いや、待てよ。橋が落ちてる可能性はあるよな。渡渉するかもしれんだろ。
つけたね。だって街にいくらでもパーツあるんだもん
あとルーフラック。予備タイヤ二本とジェリカン四つ。ウインチも付けた。雪にハマった時に自力で出られないと死ぬからな。
三日目くらいに、俺は鉄板で何か作ってた。
何かって?。バンパーに付けるとがったカッコいいやつ。
「奏介さん、それ何ですか」
夏子が後ろから覗き込んできた。
「……いや」
トゲだわ。よく見たら完全に世紀末のやつだわ。
「なんでもない。使わないやつだ」
そっと収納に突っ込んどいた。危ない危ない。危うく変なテンションで春にトゲ付きの車渡すとこだったわ。
出来上がった車達を見て、春が言った。
「あの……これ、目立ちませんか」
「目立つな」
「目立ちますよね」
「でも強いぞ」
「はい……」
強けりゃいいんだよ。たぶん。
そして俺は結局トゲを渡しておいた。だってカッコいいよ?
『原作で心を壊されて退場するモブに転生したけど、推しのメイドがクソ女だったし、作者の設定がガバガバなので好きに魔法いじって好きに生きる ~ショボい魔法しかないと笑った連中、全員ザマァ~』
https://ncode.syosetu.com/n7080mv/
新しく投稿始めました。応援よろしくお願いします




