第五十三部 置いていかれた妹
子どもの頃、どこへ行くにも姉について行きたかった私。
でも、8歳も年上の姉からすれば、いつもついてくる妹は、ちょっと邪魔だったのかもしれません。
そんな私が、ある日とうとう置いていかれました。
ところが、その姉との思い出には、もう一つ忘れられない出来事があって……。
8歳年上の姉は、きっと、どこにでも着いてくる妹が邪魔だったに違いない。
子どもの頃の私は、姉たちが出かけると聞くと、必ずと言っていいほど着いて行った。
姉たちが出かける準備をして外に出ると、私も当然のように後を追う。
そんなある日。
いつものように姉たちについて家の外へ出ると、家の前の道で姉が私に言った。
「出かけるから、着替えておいで」
私は、何の疑いも持たなかった。
「うん!」
姉が私を連れて行ってくれると思い、嬉しくなって急いで家の中へ走って行った。
急いで洋服を着替え、
喜んで家の前の道へ戻った。
ところが……
誰もいない。
「……あれ?」
さっきまでそこにいた姉たちが、跡形もなく消えている。
家の中に戻ったわけでもない。
道の向こうを見ても、誰もいない。
置いていかれた……。
一緒に出かけられると思っていた私は、大ショック。
大声で泣きながら、一人で家へ帰った。
今思えば、8歳も年上の姉にしてみれば、どこへ行く時もついてくる小さな妹は、ちょっと邪魔だったのだろう。
少し大きくなった、ある日姉が
「近くの山に登ろう」
と誘ってくれた。
朝からコーヒー牛乳とパンを買って、2人で山へ向かった。
年の離れた姉と2人きりで山に登ったのは、後にも先にも、この一度だけである。
木漏れ日の差す山道を、おしゃべりしながらどんどん登っていく。
やがて山頂に着くと、「標高388m」と書かれた立札が立っていた。
私たちはベンチに座り、コーヒー牛乳を飲みながらパンをかじる。
すると突然、草むらで何かがキラッと光った。
「何だろう?」
近寄ってみると、綺麗なケースに入った、新品のトランプだった。
「やったーーーっ! トランプ拾った!」
私は宝くじでも当たったかのように大喜び。
山登りの疲れなんて、一瞬で吹き飛んだ。
「早く帰ろう!」
もう山頂の景色なんてどうでもいい。
目的は完全にトランプへと変わっていた。
家に帰ると、さっそくケースを開けて大興奮。
新品のトランプはツルツルで、ピカピカで、それはもう宝物だった。
今思えば、姉にしてみれば、たまには妹抜きで出かけたかったのでしょう。
それでも、少し大きくなってから「山に登ろう」と誘ってくれたことは、今でも覚えています。
ただ……。
山頂からの景色より、拾った新品のトランプのほうが嬉しかった私。
子どもの頃の「宝物」って、今考えると、なんとも可愛いものですね。




