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第四十九部 東京で聞かれた「トラが逃げた所」

高校の修学旅行で東京へ行った時の思い出です。

東京の電車の中で、知らないおじさんから言われた、まさかの一言。

「大牟田? ああ、トラが逃げた所だね」

当時の私たちには、何のことかさっぱり分かりませんでした。

そして最後は、やっぱり修学旅行恒例の……。


高校の修学旅行で、東京へ行った時のこと。

友達数人で電車に乗っていると、見知らぬおじさんから声をかけられた。

「どこから来たの?」

と聞かれた瞬間、

(東京弁だ…)

と、私は思った。

私たちが、きっと方言丸出しでワイワイ話していたからだろう。

「福岡の大牟田からです」

そう答えると、おじさんは突然、

「ああ、トラが逃げた所だね」

と言った。

「……?」

私たちは、そんな事件があったことなど知らない。

顔を見合わせながら、

「何のこと?」

と、きょとんとしていた。

今思えば、何か大牟田で有名な事件があったのだろう。

でも、その時の私たちには、さっぱり分からなかった。


その後、東京タワーへ行ったと思う。

そして帰り道。

みんなで歩いていると、ホテルまでの道が分からなくなってしまった。

「どうしよう……」

すると、お茶の水の交番を見つけた。

赤門の近くのホテルまでの道を尋ねると、お巡りさんがものすごく親切に教えてくれた。

東京のお巡りさんって、なんて優しいんだろう。

今でも、その優しさは忘れられない。


ところが、時計を見ると…

門限まで、あと少し。

「走るよ!」

誰かが叫んだ。

私たちは、教えてもらった道をひたすら走った。


ホテルの側まで来ると、坂道の道路脇にたくさんの生徒たちが並んで声援を送っていた。

「がんばれー!」

「もう少しー!」

まるで、マラソン大会のゴール直前のようだった。


そして、ようやくホテルの玄関に到着。

そこには――

先生たちが仁王立ち。

「あ〜あ……またか」

私は心の中で、そう思った。

なぜなら私は、

小学校の修学旅行でも、

中学校の修学旅行でも、

門限に間に合わなくなって、走っていたからだ。

高校生になっても、やっぱり同じ。

どうやら私は、修学旅行では毎回、走る運命だったらしい。

今になってマップで調べてみたら、交番からホテルのあった赤門近くまで、徒歩で約20分。そりゃ、結構走ったはずです。

小学校、中学校、高校と、修学旅行のたびに走っていた私。

どうやら私は、修学旅行と「門限ダッシュ」がセットだったようです。

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