第三十八部 11か月で叶えた姉の夢
姉には、ずっと叶えたい夢があった。
その夢を叶えるため、私は11か月間、ひたすら節約した。
そして、ようやく夢のハワイへ。
ところが、そこで私たちは、とんでもないことをしてしまった。
私が就職すると同時に、姉達が福岡へ引っ越してきた。
私は姉の家に下宿することになった。
しばらくして、姉が突然こう言った。
「私、ハワイへ行くのが夢やった。」
姉は貯金とは、まるで縁のない人だった。
あるだけ使ってしまう、計画性のない人だった。
「貯める」という言葉は、姉の辞書には載っていなかった。
だから、3人分の旅費を私が貯めようと思った。
会社へは定期券と食券だけを持って通った。
ある日の帰り、うっかりバスをひと駅乗り過ごしてしまった。
しまった…。
財布の中は見事に空っぽ。
運転士さんに事情を話すと、
「次に乗った時でいいですよ。」
と、優しく笑ってくれた。
私はその言葉に甘え、家までトボトボ歩いて帰った。
そこまでして頑張って、節約しているというのに、
姉はというと…
毎週、天神まで英会話教室へ。
夢に向かって努力しているように見える。
でも、お金は一向に貯まらない。
たまに姉は、お弁当を作ってくれた。
私のためだったのか、それともハワイ資金のためだったのかは、今でもわからない。
でも、あの母のお弁当とは違い、おかずが何種類も入っていた。
それだけで私は感動した。
こうして11か月。
ようやく私たちは、夢だったハワイへ飛び立った。
ところが、浮かれ過ぎた私たちは、とんでもないことをしてしまう。
夜、寝ている姪を起こすのはかわいそうだと思い、
「すぐ戻るから。」
そう言ってホテルの部屋に残し、二人でディスコへ行ってしまった。
戻ると姪は、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、一人ぼっちで大泣きしていた。
今思えば、本当にかわいそうなことをした。
当時は、「すぐ戻るから大丈夫」と本気で思っていた。
今なら絶対にそんなことはしない。
昔のハワイは、今とは少し違っていた。
どちらかというと、今のグアムのような雰囲気だった。
日本語もほとんど通じず、日本語メニューもあまりない。
毎週英会話へ通っていた姉はというと…
現地では、ほとんど役に立たなかった。
それでも、買い物をして、観光をして、夢だったハワイを思い切り楽しんだ。
今はもう亡くなった姉。
あの時、11か月かけて姉の夢を叶えることができて、本当によかったと、今でも心から思っている。
今はもう亡くなった姉。
11か月かけて、姉の夢を叶えることができて本当によかった。
今思えば、あのハワイ旅行も、姉との大切な思い出のひとつです。
ただ…姪をホテルに置いてディスコへ行ったことだけは、今でも「ごめんね」と思う。




