表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
36/46

第三十六部 兄ちゃん、その言い方はないやろ

子どもの頃の思い出って、何十年経っても忘れられないものがある。

今回は、祖父が亡くなった悲しい日の思い出。

なぜか一番鮮明に覚えているのは、兄のあまりにもストレートすぎる一言だった。


中学1年生の授業中だった。

突然、教室の前の扉がガラガラッと乱暴に開いた。


兄がいきなり入ってきた。

みんなが何事かと一斉に前を向く。

兄はデリカシーのかけらもない大きな声で一言。


「爺さんが死んだ。帰るぞ。」


教室中の視線が、一斉に私に集まった。

もちろん、おじいちゃんが亡くなったのは悲しかった。


でも、その時の私は、それ以上に、

「兄ちゃん! みんなの前で、その言い方はないやろ!」

と、恥ずかしくて恥ずかしくて、顔から火が出る思いだった。


せめて、

「祖父が亡くなったので、迎えに来ました。」

くらい、少しは格好をつけて言えなかったものだろうか。


そんな気恥ずかしさとショックを抱えながら、私は慌てて荷物をまとめ、兄と一緒に家へと急いだ。


それからは、お通夜、お葬式と大人たちの慌ただしい動きに巻き込まれ、結局あの時、兄に文句を言うタイミングはとうとう来なかった。


あれから何十年。

今になっても、祖父が亡くなった時の寂しさと一緒に、あの日の教室に響いた兄の雑すぎる一言だけは、いまだに忘れられない。


そんな思い出のすべてが、今ではどうしようもなく愛おしい、私の大切な昭和の1ページだ。

悲しい思い出の中にも、なぜか笑ってしまう場面がある。

あの日は本当に恥ずかしかったけれど、何十年経った今では、兄らしいなぁと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ