表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
31/34

第三十一部 父のライバルは、16歳の息子だった

父は、なかなかの負けず嫌いだった。

兄がバイクを買えば、父もバイク。

兄が車の免許を取れば、父も車。

しかも、いつも兄より大きくて格好いいものを選ぶ。

今思えば、16歳の息子を相手に、本気で張り合っていたのかもしれない。

そんな父の「負けてなるものか!」から始まった、我が家のバイクと車の思い出。

そして最後には、私の一生忘れられない恥ずかしい思い出までついてきた。

よかったら、最後までお付き合いください。

兄が16歳になると、自動車学校へ通い、自動二輪の免許を取った。

やがて、ホンダ250ccのバイクを買った。


それを見た父は、

「息子にだけ格好つけさせるものか!」

と思ったのか、自動車学校へ通い始め、ちゃっかり自動二輪の免許を取ってしまった。


しかも買ったのは、兄のものより一回りどころか、二回りも大きなカワサキ550cc。


初めてそのバイクを見た私は、

「でっかー!」

と思わずまたがってみたが、私の足が地面に届くわけがない。

父は、その大きなバイクの後ろに母をちょこんと乗せ、仲良く買い物や近場へのお出かけを楽しんでいた。


そして兄が18歳になり、今度は当然の流れとして車の免許を取ると……。


またしても父が、自動車学校へ通って車の免許を取得してしまった。

しかも買ったのは、当時大人気だった「ケンメリ」こと、日産スカイラインの新車だった。


ちょうど父が免許を取ったばかりの頃だった。

遠く離れた大阪で、姉が結婚式を挙げるという知らせが届いた。

張り切った父は、

「家族みんなで、この車に乗って大阪まで行くぞ!」

と言い出した。


それを聞いた私は、

「いやだ、私は飛行機で行く!」

と言い張った。

結局、母も一緒になって飛行機で大阪へ向かうことになったのだ。


私が高校1年生の頃といえば、世間ではミニスカートが空前の大ブーム。

姉の結婚式のために、ミニのワンピースを買ってもらっていた私は、それを着てウキウキしていた。

けれど、忘れもしない。


式場の駐車場でのことだった。

車に忘れ物を取りに行き、前かがみになってゴソゴソしていると、


兄が後ろからバタバタと、すごい勢いで走ってきた。

「おい、パンツが丸見えぞ!」

慌てて振り返ると――


そこには、家族や親戚たちが勢揃いしていた。

そして、全員が私の方をじっと見て笑っている。


穴があったら入りたいとは、まさにこのことだった。

あの時の恥ずかしさは、何十年経った今でも忘れられない。


バイクも車も、全部兄への対抗心だったのかもしれない。

そんな負けず嫌いな父のおかげで、私は飛行機で大阪へ行くことができた。


でも、何十年経った今でも鮮明に思い出すのは、父が買ったケンメリではない。


結婚式場の駐車場で、パンツを丸見えにしてしまった、あの日の私である。


父は、兄に対抗してバイクや車を買ったのか。

それとも、単純に自分も欲しくなっただけなのか。

今となっては、もう確かめることはできない。

でも、父がケンメリに乗っている姿よりも、私の頭に鮮明に残っているのは……

「おい、パンツが丸見えぞ!」

という兄の声。

何十年経っても、そこだけは忘れられない。

父には申し訳ないけれど、我が家で一番記憶に残るケンメリの思い出は、たぶん私の「パンツ丸見え事件」である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ