第二十二部 真夜中、燃え落ちた母校
夏休みのある夜、小さな灯りを見つけたことから始まった出来事です。
まさか、あんな光景を目の当たりにすることになるとは思ってもいませんでした。
あの日の炎は、今でもはっきりと目に焼き付いています。
夜、家の窓から真っ暗な外を何気なく眺めていると、中学校の方に小さな灯りが見えた。
「あれ? 誰もいない中学校に灯りがついとる!」
私が叫ぶと、家族みんなが窓に集まってきた。
「ほんとだ!」
「何やろう?」
私はすかさず弟に言った。
「ちょっと見て来んね!」
弟は暗い道を走って行った。
しばらくして、ハアハアと息を切らしながら飛び込んできた。
「火事! 火事! 校舎が燃えよる!」
私たちは慌てて中学校へ向かった。
本当に燃えていた。
最初は小さかった炎が、見る見るうちに大きくなっていく。
近所の人たちも次々と集まり始め、消防車が一台、二台、三台……。
サイレンの音が夜空に響き渡り、気が付けば数え切れないほどの消防車が集まっていた。
運動場は大勢の野次馬で埋まり、誰もが言葉を失ったまま炎を見つめていた。
校舎は激しく燃え上がり、やがて屋根が崩れ落ちる。
最後には骨組みだけが残り、それさえも炎に包まれていった。
そして、校舎が完全に崩れ落ちた瞬間──
「あぁ……。」
あちこちから大きなどよめきが漏れた。
夏休みで誰もいなかったことだけが、不幸中の幸いだった。
あの日見た真っ赤な炎と夜空は、今でも忘れることができない。
今では校舎も建て替えられ、当時を知る人も少なくなりました。
でも、真っ暗な夜空を真っ赤に染めた炎と、校舎が崩れ落ちた瞬間に、集まっていた人たち全員が思わず声を上げたあの光景だけは、70年近く経った今でも忘れることができません。
夏休みだったからこそ人的被害がなかったことが、何よりの救いでした。




