第二十部 黒電話の秘密は守れない
今では一人一台が当たり前のスマホ。
でも昭和の電話は、一家に一台の黒電話でした。
あの頃ならではの、ちょっぴり不便で賑やかな思い出です。
昭和時代の電話と言えば、やっぱりあの「黒電話」だ。
今の子どもたちは、ダイヤルの回し方さえ分からないらしい。
番号に指を入れて止まるところまで回し、ジーコ、ジーコ……とダイヤルが戻るのを待って、また次の番号を回す。
だから、0や9が多い電話番号は、とにかく時間がかかった。
しかも、電話は一家に一台。
我が家の電話はリビングに置いてあったので、電話が鳴ると家族みんなに聞こえる場所だった。
中学生や高校生になると、友達から電話がかかってくることもある。
ところが父親は、すぐ横で新聞を読みながら耳をダンボ。
長電話をしていると、
「まだ話しよるとか!」
「電話代がもったいなか!」
「もう切れ!」
と、必ず横から容赦なく口を挟んでくる。
しかも黒電話はコードが短いので、リビングから逃げ出すことすらできない。
誰から電話がかかってきたのか、何を話しているのか、家族に全部丸聞こえである。
恋バナなんて、とてもじゃないができる雰囲気ではなかった。
今みたいにスマホを持って、自分の部屋でこっそり話せる時代ではなかったのだ。
そう言えば、あの頃には変わった遊びも流行っていた。
私たちの地域では、時報や「福岡管区気象台」の電話にかけ、自分の電話番号を叫ぶという遊びである。
電話をかけると、
「〇時〇分〇〇秒をお知らせします。」
という音声の合間に、いろいろな人が自分の電話番号を大声で叫んでいた。
私達も面白半分で、ドキドキしながら電話番号を叫んでみた。
すると後日、本当に知らない人から電話がかかってきたのである。
「時報で電話番号を聞いたんですけど……」
今なら恐ろしくて絶対にできない。
でも、あの頃はそんな遊びが普通にあった。
昭和の黒電話は、家族に秘密はなく、知らない人との出会いまで運んできてくれる不思議な道具だった。
今思えば、黒電話にはプライバシーなんてものはなかった。
家族にも、そして知らない人にも、秘密はすぐにバレてしまう――そんなおかしな時代だったのである。
今思えば、黒電話には家族の笑いや困った思い出がたくさん詰まっていました。
不便だったけれど、なぜか懐かしくて温かい…。
そんな昭和の一コマでした。




