第十三部 幼馴染と笑い転げた日々
幼馴染がいるというだけで、毎日が冒険でした。
何気ない遊びも、思いもよらないハプニングも、一人では決して生まれなかった思い出ばかり。
笑って、驚いて、時には慌てて。
そんな昭和の子ども時代には、今思い返しても吹き出してしまう出来事が、あちこちに転がっていました。
私たちの周りでは、お墓や電信柱を陣地にして、二手に分かれて陣取りをして遊ぶのが定番だった。
当時の私は、髪をきれいに二つに分けて三つ編みにしていた。
仲間を助けて夢中で逃げていると、突然、頭がグイッと後ろへ強く引っ張られた。
「えっ!? もう捕まった!?」
突然の衝撃でその場に立ち止まり、慌てて振り返ると、そこには一緒に遊んでいた幼馴染がいた。
敵から逃げるのに必死だった彼女は、目の前にあった私の三つ編みをまるでロープ代わりのようにガシッとつかみ、そのまま引っ張って逃げようとしていたのだ。
あまりのことに私がポカンとしたあと吹き出すと、幼馴染も自分のやらかしたことに気づいて大笑い。
結局、お腹を抱えて笑って動けなくなった二人は、そのまま仲良く敵に捕まってしまった。
今でも、会うたびにその話題になっては二人で笑い転げる、懐かしい昭和の思い出である。
幼馴染と私は、いつもいつも一緒に、いろんな遊びを考え出しては夢中になっていた。
ある日、外で野球ごっこをして遊んでいた時のことだ。私がバッターボックスに立ち、幼馴染がピッチャーになってボールを投げた。
そのボールに合わせて、私は「それっ!」と思い切りバットを振った。
瞬間、
「ゴンッ!」
手元に、ボールとは全く違う鈍い衝撃が伝わってきた。
「えっ……!?」
慌てて前を見ると、なんと一匹の野良ネコが、宙をクルッと見事に舞って、着地していた。
「えーーっ! ネコ打ったーーっ!」
どうやら、ちょうど私がバットを振ったその瞬間、どこからか気ままに歩いてきたネコが、タイミング悪くバットの軌道を横切ってしまったらしい。
「ねえ、ちゃんと歩いて帰ったよね……?」
「大丈夫よね、怪我してないよね……?」
私たちは青ざめ、ハラハラしながらその背中を見守った。ネコは少し驚いたような顔をしていたが、何事もなかったかのようにスタスタと歩いて去っていった。
私たちは胸をなで下ろしながらも、ふとその頃流行っていた「化け猫」の漫画や怪談を思い出してしまい、
「……ねえ、もしかして夜中に化けて出てこんよね……?」
と、本気で怯えながら心配していたのである。
またある時は、家の中でまた変な遊びを思いついた。
部屋中に何玉もの毛糸を縦横無尽に張り巡らせ、大掛かりな「蜘蛛の巣」を作るのだ。
カーテンレールから柱へ。
柱から机へ。
タンスの取っ手から椅子へ……。
毛糸をひっかけられる所は全部使って、部屋の中を移動不可能なほどの蜘蛛の巣だらけにした。
その複雑に張り巡らされた隙間を、体をくねらせ、すり抜けながら進む私たちは、すっかり気分はスパイ映画の主人公だった。
「あ、そこ触ったらレーザーに引っかかってアウト!」
「早く! 警報が鳴るよ!」
などと真剣に言い合いながら、本気で秘密任務を遂行していたのである。
ところが、そんな壮大な秘密基地のようになていた部屋を見た母親は、ため息をつきながら一言、
「あんたたち、これ全部キレイに片付けなさい!」
と、容赦ない一言を落とした。
あんなに何時間もかけてワクワクしながら作り上げた蜘蛛の巣だったのに、片付けはほんのあっという間。一瞬で終わってしまった。
お墓の周りを走り回り、三つ編みを掴まれ、ネコを打って怯え、部屋中に毛糸を張り巡らせた日々。
何をやっても楽しくて、時間が経つのが惜しかったあの頃の熱が、今でも鮮やかに胸のなかで息づいている。
あの頃は、お金がなくても、おもちゃがなくても、幼馴染が一人いれば一日中笑って遊べました。
三つ編みを引っ張られて笑い、ネコを打って青ざめ、毛糸で部屋中を蜘蛛の巣にしてスパイになりきる。
今思えば、どうしてそんな発想ができたのか不思議ですが、それが昭和の子どもたちの日常だったのでしょう。
思い出すたびに、あの頃の笑い声が、今でも聞こえてくるような気がします。




