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美人だけど最恐堅物な風紀委員長が、俺の前でだけエッチなデレデレ極甘女子を演じ始めて今日も感情がない件  作者: ファッション捜査課のスカリー


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第5話 思ったよりヤバいのが出てきたな——

こんな流れで俺は月城さんの催眠動画検証に付き合うことになり、今に至る——


「じゃあ……検証を始めるわ……」


いまだ近い距離のまま月城さんが神妙な声で呟き、次いでスマホの画面が俺の目の前に差し出される。

画面は真っ暗。その向こうで深い黒髪に縁取られた月城さんの整った顔が真剣に俺の表情を探っていた。


【悪用厳禁!意中の人を自由に出来ちゃう催眠動画!】


文字が浮かんだ瞬間、胸の奥がざわつく。


——明らかにおふざけ動画のノリ出てない!?これマジで効果あんの!?……ってか俺、ほんと何してんだろ……?


変な感情が首をもたげるが、スマホ越しの月城さんは真剣なままだった。それなら俺も真剣にやらなきゃ申し訳がたたない。


そう思い直し画面に再度集中すると、文字がゆっくり消え、いかにもそれっぽい図形が浮かび上がり画面内を動き始め、加えて妙に落ち着く音楽が流れ出す。


——おっ……始まったか?


それからどれくらい経っただろう。か細い手に握られたスマホが若干プルプルし始めている。

気が利かなかったという罪悪感に駆られながらも、ひたすら動き続ける図形を見続けて、俺もだいぶ疲れてきた。


もしかしたら“疲れさせる”のも催眠の狙いなんじゃないか?むしろ本当に催眠動画として効果があるのでは?と考え始めている自分もいる。



そして、ついに俺の意識は————



()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



『催眠完了です。術者は催眠状態を起動させるキーワードを唱えて設定を完了させてください』


AIで合成された電子音声が急にスマホのスピーカーから流れ、ついビクッとなる。どうやら、まだ終わっていなかったらしい。

月城さんも驚いたのか少しだけ目をぱちぱちさせた後、何かを考えるような仕草を挟んでから一言。


「キーワード?それじゃあ……《《ちょっとツラ貸してくれるかしら》》?……で」


——えっ?それがキーワード?ガチ?


実に月城さんらしすぎて笑えない。

しかもその声色が本気だ。彼女はやはりこの動画を本物と信じている。


『設定完了。動画の観覧者は現在、術者の命令に従う催眠状態となっており自由に会話も可能です。もし催眠状態を一時的に解きたい場合は、観覧者に聞こえるように2回指を鳴らしてください。観覧者は催眠中の記憶を全て失った状態で一時的に元に戻ります。また、再度キーワードを唱えれば瞬時に催眠状態に入ります』


——おいおい、なんかしれっとヤバい事言ってないか!?


もし本当に催眠にかかる人がいたら、意志と無関係に従わされ、しかも戻ったら覚えてないって、そりゃ月城さんも危険視するわけだ。

そして、もう一つ俺が違和感を感じたのは『一時的に』という部分だったのだが、その違和感の理由はすぐに明かされることとなる。


「また催眠状態を完全に解除し観覧者を完全に元に戻したい場合は、10万円の有料プログラムを購入し削除動画をダウンロードしてください』


——はあぁ!?タチ悪いソシャゲかよ!?それ最後に言う!?


「えっ!?そっ、そうなの!?…………………」


——えっ?月城さん?知らんかったん!?


危険な匂いが一気に濃くなり、俺もこの動画のヤバさを深く理解し始める。

が、時すでに遅し感が否めない。


『これで催眠についての説明を終了します。それでは楽しい催眠ライフを』


無機質な締めの言葉が流れ終わると同時に、スマホの画面はふっと暗転した。


「「………………」」


月城さんが無言のままゆっくりとスマホを下ろし、俺も黙ったまま言葉の置き場を失って、沈黙の中、視線だけが交差する。


近すぎる距離のせいで、目を逸らすのも不自然に思えて俺はただ固まったまま動けない。しかし脳内は真逆だった。


——これ、俺は催眠かかってないって素直に言って終わらしていいのか?


唾を飲み込む音がやけに大きく感じ、額に嫌な汗を搔き始めているのがわかる。

もし仮に。本当に仮にだが、俺だけがこの催眠動画にかからなかったとしたら?

他の人は普通に催眠にかかる本物だとしたら?


——めっちゃヤバいだろ。洒落にならん。この動画が学内に出回ったら絶対にマズい。


俺が『効かなかった』って言ったせいで、月城さんが大したことないと判断し対策が遅れたら?

それは俺が学校を不純異性交遊パラダイスにしたようなもんだよな……?


脳内で危険予測だけが暴走してアドレナリンが指先まで回ってくる感覚がする。

そのまま思考に飲み込まれかけたところで、目の前の月城さんがついに口を開いた。


「なっ……並樹くん?」

「……………………」

「並樹くん…………その…………どんな感じかしら?」

「………………………………」


月城さんの表情が目に見えて不安に寄った。

口元がわずかに強張り、視線が俺の目と唇のあいだを行ったり来たりしている。

でも、俺は答えられない。どう答えるべきかが分からない。

喉の奥に言葉が引っかかったまま出てこないのだ。


沈黙が空間を支配し、斜陽の中で机の影だけがじっと伸びて、音のない時間が重く積もっていく——


月城さんがゴクリと喉を鳴らし、もう一度俺の目を見つめ直すと、それから腹を括るみたいに背筋を通しもう一度声を上げた。


「並樹くん……あなたがもし催眠に掛かっているなら……私の言う事を何でも聞くなら……イエスとだけ答えなさい。こっ、これは命令よ」


声が震えている。

でも同時に言葉に凄みが宿り、命令という言葉に合わせて彼女の目の焦点がぴたりと合う。

その言葉から伝わってくるのは月城さんが本気でこの検証を必要だと信じていること。だから余計に思考がかき乱される。


嘘は吐きたくない。

でも、この動画を危険だと学内に訴えるには、どうしても『危険だ』と示す材料がいる。それを作るには……俺が嘘をつくしかない。


彼女はそれを望んでる気もする。じゃなきゃこんなに真剣にならないだろう。

だったら……とことん危険だと分かるように俺が演じればいい。

検証期間だけ我慢すればいいだけだ。その後の解除課金のこととかは……後回しでいい。


——皆を守るためにも。俺は優しい嘘を貫き通すべきなんじゃないか?


そう考えた刹那、月城さんの口からまた言葉が飛び出した。


「並樹くん!答えてちょうだい!」


その圧に肩を押された気がした。まるで誰かが背中から合図を出したみたいに。

俺の口が、それこそ催眠にかかったみたいにひとりでに動き出す。


「…………………………………………イエス……」


月城さんが目を見開く。

驚きと、安堵と、そして別の感情が混ざったような表情が一瞬だけ揺れた。


……もうこうなったらやるしかない。やり切るしかない。皆のために。

新しい風紀委員長。月城さんのために——


【作者から不躾ながらお願いです】


少しでも、「面白い!」「続きが気になる!」「更新しろ!援してる!」

と思っていただけましたら、

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【★★★★★】にしてくださると嬉しくて昇天します!

なにとぞ、皆様のお力添えを賜りたく存じます。


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