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美人だけど最恐堅物な風紀委員長が、俺の前でだけエッチなデレデレ極甘女子を演じ始めて今日も感情がない件  作者: ファッション捜査課のスカリー


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第4話 やっぱり月城さんは月城さんだった件——

緊張感に包まれる教室で、俺は月城さんが口を開くのをただ見守っていた——


「並樹くんに見てほしいものがあるの……」

「見てほしいもの……?」

「そう……実は今、NowTubeにある動画がUPされているの。その動画が健全なものなら別にいいのだけれど、もしもの事があると……ちょっと風紀委員としては看過できないのよ」

「看過できないって……それ、どんな動画なの?」

「それは……」

「…………それは??」


つい食い気味になる俺を落ち着かせるように少し間を置いて、月城さんが続ける。


「…………見た人を催眠にかける動画らしいの……」

「…………………ん?…………催眠?」


——待て、なんか話の方向性が変わってきてない?


心臓が一瞬だけ空振りしたみたいに拍が乱れ、頭の中で告白という文字が行き場を失う中、月城さんは更に前のめりにぐいっと俺に体を寄せてきた。

椅子がわずかに鳴って距離がより近くなり、石鹸のようないい匂いと、控えめながらも形の良いおっぱいが急接近して、思わず少しのけぞってしまう。


「噂によると、この動画を見た人は催眠状態になって、見せた人の言う事を何でも聞くようになるらしいの……そんな危険な動画がこの学校で流行ってしまったら……それは風紀が乱れに乱れ、不純異性交遊パラダイスになってしまうのよ!!校内のそこらかしこで催眠でラリってる男女がエッ………………こっ、コホン……」


「エッ……?」


「とっ、とりあえずこれは由々しき事態なのよ!!私が風紀委員長に就任したそばからそんな事が起こったら、私の信用も風紀委員のメンツも丸つぶれだとおもわないかしら!?」


——エッの先って……?不純異性交遊パラダイス……?月城さん?


色々とツッコみたい部分はあったが、恐いしツッコめない。

やはり月城さんは月城さんだったわけで、堅物の風紀委員長で、ド真面目な人。期待した俺が馬鹿だった。

そう思いながらも、ふと浮かんだ疑問を口にしてみる。


「そっ、それは確かにそうだけど……でもそれと俺に彼女とか好きな人がいるとか、なんの関係があるの?」

「それは……並樹くんにはこの催眠動画の検証の被験者になってもらいたいからよ!」


——ん?サラッとなんか言わなかった?


「…………えっ?……なんて?被験者ぁ?」


「そうよ。この動画の効果は本物なのかを調べたいの!もし仮に本物なら、その効果を検証して資料にまとめ、危険性などを先生方に訴えようと思っているの。この学校の風紀を守るためにも、学内で視聴禁止令を出してもらわないといけないじゃない?」


いつになく言葉に力がこもる月城さん。

言ってることは分かる。すごく。風紀委員の仕事としては大いに有意義だろう。

でも、どうしても繋がらない部分が残っている。


「えっと、なんとなくわかったけど……その……俺の交際関係がどう関わるのかを知りたいんだけど?」

「それはっ!?……それは……もっ、もし並樹くんに恋人や好きな人が居たら、この実験でなにか感情に変化があったら申し訳ないじゃない!?一応、私が催眠にかけて主導権を握るわけだし……配慮って大事じゃないかしら!?」

「ああ……確かに……?」


月城さんは一瞬だけ言葉に詰まったみたいになった気がしたが、気のせいだろう。


でも……そんな危険な動画の被験者に俺がなんの!?なんで俺!?


目の前には、真剣な表情のままの月城さんの墨色の瞳がこちらを射抜き続けている。

そのせいで逃げ腰になりたいのに、その視線の強さと真剣さが俺の心を揺さぶってそうはさせてくれない。


まあ、考えてみればもう上級生の風紀委員は事実上卒業しちゃったし、そうなると最上級生の風紀委員は僕と月城さんだけなわけで……こんな危ない事を後輩に押し付けるわけにもいかないよなぁ。

かといって先生方に提出する資料作るなんて俺には出来なそうだし、俺がやるしかないのか……?


そんな俺の考えを見抜いたみたいに、タイミングよく月城さんの声が落ちてきた。


「それで並樹くん……もう一度お願いするけど、この動画の効果検証の被験者になって資料制作の手助けをしてくれないかしら?もちろん、これは私と並樹くんの間だけで行うし、私が責任持って管理するから……悪いようにはしないから……」


「それは……」



「ねぇ……お願い……並樹くん……」



普段の月城さんからは想像も出来ないほど声色が弱々しくなり、しおらしい表情を向けてくる彼女に俺の中の何かがドクンと脈打った気がした。

俺はそもそも女子にこんな顔を向けられたこと自体ほとんどなく耐性は激弱。ましてそれが、性格とかは一旦置いておいて、S級美女の月城さんなわけで……


——マジでその顔なに!?可愛すぎん!?そんな顔できんの!?どうしちゃったのよ月城さん、反則だろそんなの……


男とは弱きものなり。


しかも彼女はいたって真剣で、風紀委員長として職務を全うしようとしているだけなのだ。

それなら支えてやるのが同じ委員で、クラスメイトである俺の役目なんじゃないだろうか?こんな俺でも少しは役に立つかもしれないんだ……。


数秒間、頭の中で思いつく限りの言い訳を並べ、俺は最後にそれをまとめてへし折ってからゆっくりと口を開く。


「…………わかった、いいよ。俺でよければ手伝うよ」


自分の声が教室に妙に大きく反響したその瞬間、目の前の月城さんの表情がわずかに、いや、はっきりと明るく変わった。俺にはそう見えたんだ。


「ほんとっ!?」

「ああ、もしその動画が本物ならそれこそ大事だし、風紀委員としてほおっておけない気持ちもわかるしさ」

「ありがとう並樹くん!あなたに相談して本当によかったわ!」


月城さんの強張っていた眉間の力が抜けて、口元が少しやわらかくなる。

いつもの気難しい感じじゃなくて、目の奥の鋭さが丸くなっているのだが……その変化がどうにも困る。


みぞおちのあたりがどうにもむず痒くて、なぜか見てはいけないものを見たみたいな気持ちになるのだ。


こうして俺は、危険で、どこか甘いこの『検証』という名の深い沼に、何も知らない顔で足を踏み入れていくのだった——


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