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美人だけど最恐堅物な風紀委員長が、俺の前でだけエッチなデレデレ極甘女子を演じ始めて今日も感情がない件  作者: ファッション捜査課のスカリー


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第23話 舞い降りる女神——

スマホを覗くと、時刻は10時に差し掛かかろうとしていた——


案の定、一時間以上待ち合わせの時間より早く到着した俺は、緊張を薄める為に凛との待ち合わせの場所である、繁華街近くの銅像前の近くのカフェで時間を潰すことにした。


「えっと、まずはお昼ご飯を食べに行って……そのあと凛が見たいって言ってた雑貨屋に行って、それから映画……よし。完璧」


口に出して今日の流れを復唱する。


凛の家でやったデート会議の結果、決まったコースは驚くほど王道だった。

というか、二人とも経験がなさ過ぎて何をしていいか分からず、最終的にネットで見つけた定番デートプランに落ち着いたというのが実態だ。


ある意味、俺たちらしい。


カフェのドアをくぐると、休日の空気がそのまま店内に詰め込まれていた。

とりあえず列に並んで注文を終え、ドリンクを受け取ってから空いていそうな席を探して歩き出す。


——さすがに人が多いなぁ……席あるかな?


あたりを見渡しながらキョロキョロと席を探す俺の背中に、ふいに声が落ちてきた——


「えっ……飛鳥くん……?」


その聞き慣れた声の方向へ振り向くと、そこには絶世の美女——月城凛が少し驚きの表情を浮かべて立っていた。


一瞬脳が追いつかず、目だけが勝手に情報を拾っていく。


長い黒髪は艶を帯びて普段より柔らかく流れ、可愛いのにどこか大人っぽいメイクが髪色に映えて、輪郭の整った顔立ちがまるで二次元から飛び出してきた人形みたいだ。


服装も、学校で見る彼女とは全く別物だ。


下はタイトな黒いスカートにヒールブーツ。上に着ているのは薄手のグレーのニットなのだが……そのシンプルなニットはなぜか胸元の部分だけぽっかりと小さな開きがあって、そこから覗く深い胸の谷間がやけに綺麗で、視線の置き場を奪ってくる。


そしてなにより……今日の凛は胸がデカい。ものすごく。


サラシを取り完全体となった凛の破壊力は圧倒的だった。

近くにいる人の目線をこれでもかと奪ってゆき。風紀が乱れまくっている。


「りっ…………凛……?」


——誰ぇ!?この綺麗でエッチな子……本当に凛なの!?今日一日この人と一緒にデートすんのぉ!?


あまりの破壊力に顔が引きつり、視線が谷間に吸い寄せられそうになる。

言葉を失ってしまった俺を見て、凛は少しだけ不服そうに眉を寄せた。


「なっ、なにかしら飛鳥くん。その顔は?私、どこか変……?」

「いや、そうじゃなくて……」

「そうじゃなくて…………なによ?」


怪訝そうに詰められて、俺は逃げ場を無くしてしまった。

そしてしっかり失言を選んだ俺。


「その、なんていうか……今日の凛、凄い可愛いっていうか綺麗っていうか……」

「かわっ……!?可愛い!?」


言った瞬間、全身が熱くなる。


——ヤバっ……なんてことを言ってしまったんだ俺は!?何を口走ってる!?


俺のその一言に、凛はさっと視線を逸らしてしまった。

やはり、ちょっと気に触ったのだろう。


「「…………………………」」


賑やかなカフェ店内に、俺たちの周りだけ沈黙が落ちたみたいだった。

デート出だしから。いや、むしろ催眠前から何してるんだ俺は。凛はその役になりきってるだけだってのに、勝手にドキドキして、勝手に焦って、俺ってやつは……。


そして俺はこの気まずい状況を打破すべく、なりふり構わず口を開いてしまう。


「凛はここでなにしてたの?なんか先に用事あったりしたの?」


必死に空気を繋いだ結果がこれだ。詮索なんてデリカシーの欠片もない。

凛はこちらに振り返ると、一度だけ瞬きをしてから沈黙をなかったことにするみたいに言葉を返してきた。


「えっと、それは……むしろ飛鳥くんはここで何してるのかしら?」

「それは……なんていうか、ちょっとデートに緊張して、焦って家を出たら早く着いちゃって。だから時間潰そうって思って……」


逆に問われて正直に理由を口にすると、いよいよ情けない。

でも凛はそんな俺を笑うでも責めるでもなく、視線を少しだけ柔らげた。


「そう……ふふっ♡私も、そんなところよ」

「えっ……凛も?」


俺が聞き返すと、凛はわずかに頬を赤くして唇を尖らせるように視線を逸らす。

さっきの可愛い発言が尾を引いているのか、反応がいちいち素直な感じがして、俺のほうが落ち着かない。


「なによ、変かしら?私だってこれ、初めてのデートなんだから……仕方ないじゃない……」


言い切ったあと、凛は自分で自分に照れたみたいに咳払いを一つする。

その仕草が妙に普通で、肩の力が少しだけ抜けた。

凛も同じように緊張してる。その事実が胸の奥の硬さをほどいていく。


けれど、凛はすぐに調子を取り戻し、周囲の視線と通路の流れを確かめるように軽く見回して現実的な指示を口にしてくる。


「ほらっ……こんな所で立ち話は邪魔になるわ。飛鳥くん席はあるの?」

「それが……なくて……」

「ふふっ……もう、ダメじゃない。今日は土日よ?ちゃんと先に席を探しとかなければ」

「そうだよね……ははっ……」


またしても情けない俺の回答に、凛は小さく笑って呆れた素振りを見せる。

そして小さく何かを考えた後、口を開いた。


「私の席、2人掛けだからよければ一緒に座りましょ?」

「いいの?」

「もちろんよ。どうせこの後一緒にデートするのよ?同じことじゃない」

「ありがとう、助かるよ!」

「じゃあ行きましょ、私の席は向こうの端だから」


いつものように身を翻した凛、俺はそんな彼女の後ろについて歩く。

さっきまで綺麗で別人みたいだと思っていたのに、こうして先導する背中はどこかいつもの凛らしくて、安心してしまう自分がいる。

目に映る凛はあまりに刺激的で、そこまで見れないが……。


凛の席は店の端の壁際だった。

二人がけのテーブルに向かい合う形で席に落ち着いた俺たちは、今日の流れを淡々と確認していく。そして、事務的な確認が終わった時、凛が少しだけ息を整えるのが見えた。

ほどなくして、そっと視線をこちらに戻す彼女。


「それじゃあ飛鳥くん……準備はいいかしら?」

「もちろんいいよ。やっちゃって」


凛は小さく頷き間を作った。

その間が合図の前の呼吸だと分かり、俺は表情を整えて彼女と向き合った。


「飛鳥くん、《《ちょっとツラ貸してもらえるかしら》》?」


その一言に俺はいつも通り演技に入る。

今日は長丁場だ。何が起こるかわからない。だから常に気を抜かずにやっていかなければ。

そう自分に強く言い聞かせて——



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