第13話 始まる甘々質問タイム♡後編——
「あえて言うなら大きいおっぱいが好きかなぁ?あえてだよ?あははっ。でも、小さいのだって魅力的だと思うしなぁ?」
口をついて出たのはこれだった。はい、八方美人です。
だからいい人止まりでモテないし、ほのか先輩にも振られんだよ。辛っ。
でも、これが嘘もつかずに相手も傷つけない一番の方法だと俺は信じてやまない。
通話越しのリンの声が一瞬止まった……そんな気がした。しかし、すぐに凛の探るような声がスピーカーから溢れる。
「あっくんはさぁ……なんでおっきいおっぱいが好きなの?」
「それは……それはさ……」
「それはぁ?なぁにぃ?揉みやすいからぁ?それとも顔を埋めたいからぁ?素直に答えてね?これも命令♡」
——もうめちゃくちゃだよマジで。くそぉ……。
顔が見えないのは不幸中の幸いではあった。が、しかし。
凛はここで話した内容を明日以降もずっと覚えているんだろ!?それでこれからずっと騎乗位と巨乳好きのスケベなやつだって思われるわけだ……。
多分嫌われる。いや、むしろ既に嫌われてるかも。なにが友達として距離を縮めようかな?だよ。こんなやつ絶対嫌だろ。
頭の中に後悔ばかりが湧き上がる。しかし残念ながらこれも命令なのだ。運命とは残酷だ。
「どっ……どっちも理由としては正解かな?あとは、なんかおっぱい大きい人って包容力があって落ち着くっていうか……」
俺と凛との関係は完全に終了。脳内でガラスが割れる音がした。
しかし、通話越しの凛の甘い演技は続いている。それが余計辛さを煽ってくる。
「んっふふ〜♡そっかぁ///……あっくんってけっこう欲張りさんなんだね♡」
「そっ……そうかなぁ……あははっ……」
——いっそ殺してくれ。生き恥だ。
折れそうな心をどうにか支え、俺は続いてゆくおっぱいトークにこのあとも耐え続けた——
————————
体位の話、おっぱいの話、好きな食べ物の話……会話は途切れなかった——
その中で唯一、実用性は皆無だが有益だったのは、凛は甘いものに目がなく特にあんこが好きって事だけ。
俺の心のHPが激ローになり始めていたその時、通話越しの凛の声に驚きが混じった。
「へっ……もうこんな時間!?むぅぅぅ、明日朝早いから、そろそろ寝る準備しないと……」
凛の声に反応して時計に目をやると、既に10時半を回っていた。
俺からしたらここから、という時間なのだが……真面目な凛にとってはそうでもないんだろう。気づけば2時間近く話していた事になる。
「えっと、あっくん……ちょっとビデオ通話したいから、カメラをオンにしてくれる?」
「えっ?どうして?」
「いいからっ!オンにして画面見て!」
「あっ……ああ、わかったよ」
急な凛の提案に俺は言われるがまま耳に当てたスマホを離し、カメラをオンしてビデオ通話モードへ切り替える。
「んふふっ♡あっくんが見える///やっほ〜、見えてる?」
「うん、見えてるけど……ぇっ!?」
映った画面を見て、俺は声が漏れそうになるのをぐっと飲み込んだ。
画面の向こうで凛がとろんとした笑顔のままこちらに手を振っている。
背景には彼女らしい整った部屋の一角が映っていて、どうやら俺と同じようにベッドの上に腰掛けているらしい。
そこまではいい。問題は、その姿勢と服装だ。
凛はスマホを少し高く掲げ、俯瞰するように自分を映している。
つやつやの黒髪と人形みたいに整った顔立ちがやけに近く感じて、心がグラつく。
そして服装なのだが……
ふわふわのピンクのパーカーみたいなパジャマを来ている彼女は、その胸元が少し大きめに開いていて、真っ白な胸元が不意にちらりと覗いているのだ。ノーブラの可能性さえある。
しかもそこに落ちる影が思った以上に深く、視線が固定されて俺の股間を刺激してくる。
もしかしたら小さいのも案外……そんなあまりにも失礼で馬鹿な考えが湧き上がそうになって、慌てて消している自分が恥ずかしい。
脳内が忙しい中、画面越しにふと凛と目が合った——その時、彼女は少し眉を下げて片手をそっと上げる。
「それじゃ……名残惜しいけど、今日はここでバイバイかなぁ……」
————————パチンッパチンッ
細い指が画面で揺れ、音を立てる。
——そうか、この仕草と音を聞かせるために画面をONに……。
既に画面越しにいるのは、いつもの……クールな凛だった。その格好を除き。
今更凛の意図に気づいた俺は、情けなさが込み上げる中、怪しまれないようにすぐに催眠が溶けた演技を始める。
「はっ……!?なんで俺はビデオ通話を……?」
「えっと、あっく……あっ!?コホンっ……飛鳥くん。催眠は解けているわよね?」
「うん、もちろん」
「ふぅ……よかった」
凛の言い間違いは聞かなかった事にしよう。演技をしていればどうしてもあるんだから。
「今日もありがとう、わざわざ時間を取ってくれて。すごく参考になったわ」
「そんな……これくらいならいつでも言ってよ」
「ふふっ、ありがとう。それじゃ私はそろそろ失礼するわね。おやすみ、飛鳥くん」
「ああ、おやすみ……凛」
相変わらず別れを惜しむなんて微塵もない端的なやり取りにどこか安心する。
でも、画面の中で手を降る凛はいつもよりほんの少し柔らかい気がした。
俺はそんな彼女に手を振り返すと、この波乱の通話を終えて、大きなため息を一つ落としたのだった——




