検査
放課後、友達が、「いっしょ帰ろう!恵里菜!」と言ってくるが、「ごめん、ちょっと、気分悪いかも。保健室行ってから帰る。」と言う。友達は、「えっ!まさか、あの当たったとこ、まだ痛むの?まじ、いばけん、せんぱーん!」と言い終わると、「保健室の先生呼んでこようか?」と、さすがに心配そうに言う。「大丈夫、ちょっと休みたいかも。」と言うと、友達は、自分といたくないと察したようで、「オッケー。じゃあ、また明日!後でラインして!」というと、急いで帰っていった。恵里菜は、ノートを広げたまま、ぼんやりしていると、教室の端にいた安紀がこちらに来て、「ここ、字が違う。」と言った。それは、「少子高齢化」の「少」の字が、「小」と間違っているだけのことだった。
安紀は、「さっきの話だけど、もし、今回は妊娠してなくても、何回でも、やればいいから。」と、本当にすごいことを平気で言う。恵里菜は、「えっ、安紀くんにとって、それって時間の無駄じゃない?何でそんな何回もなんて言えるの?」と、強い興味と少しの期待を持っていくと、安紀は、「えっ、だって、僕だけ目的を果たして、石川さんの目的は無視するなんて、フェアーじゃないじゃない。」と、何の感情もなく言う。「子どもがたくさんほしいって言ってたよね。じゃあ、時間は、無駄にできないかなって。」と続ける。恵里菜は、「フェアって…。」と黙った後、安紀は、「また一緒に帰るのはまずい。周りの目が最近、厳しくなってるからね。僕は先に家で待ってる。途中で、検査薬を買うから、ちょうどいいよ。」と言う。恵里菜は、もう従うよりしょうがない、という気になって、「分かった、ありがとう。」と言った。
安紀が去った後、本当に保健室に行った。保健室の先生は、「お腹ぶつけたんだって?」となぜかもう知っていて、「痛い?見せてもらえる?」と言うので、シャツをめくると、「うん、痣にはなってないね。気分は悪い?」と聞く。「少し。」と答えると、「そっか、きっと心が落ち着かないからだね。ここで少し休む?」と聞いてくれる。「約束があるから。また。」と、恵里菜は、答える。「安静にね。」という言葉を背中に聞いて、安紀のマンションに向かう。
ピンポンを押すと、安紀は、少ししてドアを開けて、「来ないかと思った。」と言う。恵里菜は、黙って入る。「今日は、塾ないの?」「うん。」恵里菜は、話を続けたいのに、いつも一言二言で終わってしまう。安紀は、平気な顔で、検査薬の箱を取り出し、「トイレは、出てすぐのところ。」と言う。恵里菜は、震える手でそれを受け取った。




