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約束  作者: 梅子
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不徳

 麻酔が切れると、恵里菜は、お腹が痛くて、しかも身体が震え出して、恐怖が拭えない。そこに安紀が来て、「男の子だって。康人くんの弟だ。」と意味もなく確認するので、恵里菜は、震えながらも、「あっち行って。」と言う。


 安紀は、その日の夜に自殺未遂した。恵里菜は、何も知らない。安紀の母親が部屋には入ると、薬を大量に飲んで倒れていた。母親がすぐに救急車を呼び、一命を取り留めた。


 安紀は、ぼんやりしている。安紀の母親が、「赤ちゃん、生まれたって言うじゃない。どうしてこんなことしたの?」と聞くと、「あの子がいれば、僕はいらないかな、と思って。だって、そうでしょ?あの子は、僕と大差ない。」と訳の分からないことを言う。

安紀の母親は、このままじゃ、息子はまたやる、と直感して、恵里菜の母親に会いに行き、「どうか、息子に、康人くんを会わせてください。」と頼み込む。恵里菜の母親は、「こっちも赤ちゃんが生まれたばかりで大変なのに、なんなんですか?向こうから会いに来るのが筋じゃないですか?」と言うが、安紀の母親が土下座をして、一歩も引かないので、仕方なく、遥菜と康人を抱っこして、安紀の母親について行ってやる。

 康人は、病院のベットに横たわる安紀を見た瞬間に、「パパー!!」と飛びつく。安紀は、「おお!康人くん。」と、青い顔で言う。康人は、「パパ、病気早く直してね。」と言うと、安紀は、細い指で、眉を触って、「病気かー。」と笑った。安紀は、康人の小さい手を、ぱっと優しく捕らえて、自分の胸に当てた。「康人くん、教えてあげるね。僕にはね、ここがないんだよ。だから、毎日、お酒を飲んで、講義をさぼって、道で吐いて、倒れるように玄関で眠る。康人くんは、持ってる?…。持ってるか。僕は、康人くんくらいの時、自分の父親なんかどうでも良かった。」と笑う。「お母さんのおかげだね。」

康人は、青白い顔のパパを見て、側にいてあげないと、と直感する。「パパ。僕はずっと側にいるよ。」と言うと、安紀は、「ずっとかー。きっと、ひどいところを見られるな。パパがお母さん以外の女の人にどんな口の利き方をするか、お勉強したらだめだよ。」と言う。


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