再会
恵里菜は、通信制高校を卒業した。康人は4歳、遥菜は3歳になった。遥菜が生まれてから、安紀とは一度も会っていない。康人は、たまに、「パパに会いたい!」と言うようになったが、恵里菜は、「パパはいないんだよ。」と教えた。恵里菜は、派遣社員になった。康人と遥菜は、保育園に預けている。
「早く準備して、康人!ほら、リュック!」と言っている間に、遥菜が玄関で、「うわーん!!」と急に泣き出す。普段はおとなしい遥菜が泣くのは珍しいので、「どうしたの?」と言うと、遥菜が、康人の方を指さすが、そこには、誰もいない。康人もいない。玄関ポーチを出て見渡す。でも、いない。「康人!康人!どこ!?康人!」と恵里菜が叫ぶと、「うわーん。」と、遥菜がさらに泣くので、恵里菜は、パニックになって、先に出勤していた母親に電話をかけた。しかし、通じない。遥菜を抱っこして、康人を探すしかない。少し行くと、康人のリュックについていた、犬のストラップが落ちている。恵里菜は、遥菜を抱えながら、腰を下ろして、それを拾う。一度踏まれたのか、黒ずんでいる。それを見ていると、抑えようとしても涙がこみ上げてきて、「康人!ごめんね!康人!」と、叫んでしまう。突然、泣き叫ぶ母親に抱かれていた遥菜が、「あー!」と言って指をさす。反射的に見ると、公園で康人が滑り台の上にいる。「康人!!」と恵里菜は、走り出す。恵里菜の目には、もう康人しか映らない。途中、転びそうになって、慌てて強く遥菜の背を支える。飛びつくように康人のもとに行くと、「康人、ごめんね。ごめんね!」と泣く。
だから、本当に近づかれるまで気づかなかった。あの時から、さらに身長が8センチ伸び、より、凛とした、そして、さっぱりしているのに何か甘い香気を感じさせるような彼がいることに。
安紀に気づくと、恵里菜は、はっ、と息を飲み、それでも、震える手で、子どもたちを自分の背中側に押して、まるで、子を守ろうとする獣のように、安紀を睨んだ。安紀は、その圧に、細く長い指を眉間に当てて、ただ「ひどいなぁ。」と呟いた。それ以上、何も言わない。恵里菜は、しびれを切らして、「どうして、康人を!子供たちに関わらないで!」と叫ぶ。「違うよ、康人くんが、僕を覚えてたんだ。僕が道を歩いてたら、パパ?って僕を呼んで、付いてきた。子供は、公園かなと思って連れてきただけ。」と言う。恵里菜は、「関係ない!!警察に通報する!」と言う。すると「康人くん、お母さんが僕を通報するって。」と、安紀は康人に言う。康人は、恵里菜を見て「ママ?」と言う。恵里菜は、「康人、この人はパパじゃない。何かされてない?痛いところない?」「うん…。」「信じちゃだめよ。ママを信じて。」




