冷気
恵里菜は、少しすると、待ち構えていたかのように病院に行く。尿検査は、突破する。エコーで確実になり、恵里菜は、ガッツポーズをするが、医者が、少し嫌な顔をしたのを見逃さなかった。医者は、早めの入院と、疲れないこと、少しでもおかしいと思ったらすぐに病院に来るようにと言う。恵里菜は、メモをして聞いて、医者に「流産したら、意味がないんです。」と訴える。
そこから、恵里菜は、康人に「だっこ!」といわれても、「無理。」と返すようになった。家でほとんど寝ている。母親は、もう、娘についていけず、結局は、転職して、より家に長くいるようにした。安紀は、通ってくるが、恵里菜は、「今は休憩。見てるから、康人くん、だっこして。」と命じる。安紀は、「言われなくてもやるよ。」と抱っこして、「どんな気分?」と聞く。恵里菜は、「最高の気分。」と短く答えた。
そんな生活をしていても、恵里菜は、結局、管理入院することになった。恵里菜のお腹は、大分大きくなった。「性別が分かりますよ、どうしますか?」と聞かれて、恵里菜は、「教えてください!」と食い気味に答えた。「女の子ですね。」と言われると、「女の子!」と恵里菜が喜ぶので、医者が「女の子ほしかったの?」と聞くと、「いえ、1人目と違うので。」とにこにこしながら答えた。
安紀は、病院にも約束した1週間一度の頻度でしか来なかった。恵里菜は、お腹の子の性別が分かってから、首を長くして安紀を待っていた。安紀が通学鞄を下ろす。安紀が恵里菜の顔を見るなり、「女の子だった。」とお腹を撫でる。安紀は、「そう。」と短く答えた。恵里菜は、拍子抜けして、「康人くんと違うよ。何とも思わないの?」と聞くと、安紀は、「それが何?2分の1の確率なんて、珍しくもないよ。」と言い放つ。
それから、安紀は日に日に冷たくなるようだった。週に1回は必ず来るが、時計ばかりを見て、「じゃあ、行くね。」と、素っ気ない。それは、いつもの態度だったが、人との交流が制限され敏感になっていた恵里菜は、何か違うものを微かに感じて、不安に震えていた。




