強行
それから、恵里菜は、康人を溺愛するようになった。康人が熱を出すと、大騒ぎして、病院に連れて行き、待たされると、可愛い顔をしているのに、怒鳴って、病院の人たちを困らせた。康人は、身体が弱いので、何度も、恵里菜は、わめいた。
恵里菜はついに、学校で、立ちくらみを起こし、立てなくなった。連日、康人の世話をして、病院に連れて行き、さらに、産後の疲労が重なり、そこに、受験やらなんやらで雰囲気の最悪な学校で、再び輝こうとしていたから、恵里菜は、限界を迎えそうだった。周りに生徒が集まって、おい、大丈夫か?とか、えっ、石川?とか、いろいろ聞こえる。恵里菜は、早く立ちたいと思うが、ぐるぐるするので、「大丈夫、大丈夫…。」と見えない人混みに繰り返す。先生が一人駆けつけて、保健室の先生が呼ばれ、恵里菜は運ばれた。保健室の先生は、恵里菜が出産したことを知っているので、すぐに疲労だ、と決めつけて、安静第一!と恵里菜をベットに寝かせた。その日は、天気も悪く、頭痛持ちの生徒も数人、ソファーに座って、青い顔をしていた。恵里菜は心細くて、母親に電話する保健室の先生の声をよく聞いていた。
恵里菜が少し眠っていると、人の気配がした。ママ?と目をこすると、安紀だった。恵里菜は、嬉しすぎて言葉もなく、ただ、血が一気に巡る感じがした。「どうして…来てくれたの?」安紀は、目をまっすぐ見て、「約束が壊れるかと思って。」と言う。えっ?と聞き返すと、「僕は、「父親」としてふるまう約束をした。それを約束として強いている、母親の石川さんがだめになれば、約束が壊れる、美しくないし、不誠実だ。」と言う。安紀は、そこまで言うと、急に、恵里菜を抱きしめて、不意に、キスまでした。恵里菜が、嬉しいなりにも驚いていると、安紀は、「石川さんは、これで回復し得ると信じてるんでしょ?」と言って、4、5回、押し付けるようなキスをした。安紀は、自分のワイシャツの首元のボタンを緩め、恵里菜の制服のボタンも外して、今度は胸を触った。そこから白い液体が溢れるのを、安紀は、じっと見ていた。
そこに、ベットの周りのカーテンを保健室の先生と母親が入ってくるので、安紀は振り返って、悪びれもせず、2人の横を通って保健室を出て行った。




