特別
あの夜から、恵里菜は、嘘のように子どもの面倒を見るようになった。泣いたら飛んでいき、夜泣きにも耐え、おむつも替え、ミルクも作った。
そんな生活なのに、学校にも行った。体育の授業にも出た。少し痩せて、化粧もして、やっぱり、あいつかわいいよな、と男子からの好奇の目に晒された。勉強も頑張り始めた。真ん中よりちょっと下くらいにはなった。
1週間後、最近、恵里菜と入れ違いに赤ちゃんの面倒をあまり見なくなった母親は、玄関で安紀を迎える娘を見た。赤ちゃんを抱き上げ、手渡すと、その小柄な少年は、抱き上げて、「少し重くなった気がする。」と言う。その後、赤ちゃんを連れて、部屋に入ったまま、外に出てこなかった……。
恵里菜は、「いつもと違う安紀くんの顔見ちゃった!!」というと、安紀は、「どうしてそんな意地悪を言うの?」と汗を拭きながら、真顔で言う。恵里菜が、「よかった?」と聞くと、安紀は、「うん。」と答えた。「恵里菜のこと、離したくないと思った?」と、聞くと、「離したくないとか、そういうのとは違う。」と答える。「じゃあ、何?」と聞くと、「頭が働かなくなる感じで、でも、すごく繊細なんだ。」と、どうせ分からないから話しても無駄という顔をして言う。「恵里菜だから、特別なんじゃない?」と聞くと、「分からない。」と言いつつ、珍しく言葉を足して、「でも、確かに普通とは違う。」と言う。恵里菜が、「えっ?」と言うと、「僕は見てたんだ、君から、子どもが出てくるところを。」と、今度は康人を見て言う。恵里菜は、「じゃあ、もし、私と同じような人がいて、安紀の子どもを産んだら、やっぱり、特別になるの?」と聞く。安紀は、「2回目じゃないか。それで、どうして特別だと思えるの?」と、恵里菜の顔をまっすぐ見て言う。恵里菜は、「じゃあ、二人目が生まれても?」と、自分のお腹を撫でながら、なぜか、康人を見て言う。安紀は、「出産だけで言えば、この子ほどの感動はないだろうね。」と、落ち着いて言う。




