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約束  作者: 梅子
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交渉

 恵里菜は、安紀の母親に向き直して、「母親に、そんな風に思われて育つ子が、幸せを描けると思いますか!」と言い放つ。安紀の手を引くと、意外にも付いて来る。

 夏の夜は、変に感情的になる。むしむししている中を走ると気持ちいい。川辺を走り、恵里菜が繋いだ手を挙げると、安紀は、少し跳ねる。自分の家の近くまで来ると、恵里菜は少しためらうが、安紀は、「もしかしたら、僕の子でも、育て方によっては、変わるのかもね。」と言う。恵里菜は、「諦めない。」と言った。そして、初めて、子どもを交互に抱っこした。

 安紀は、子どもを恵里菜に渡してから、「僕は父親を知らない。」と、唐突に言う。恵里菜は、「私も。」と答えた。

 恵里菜は、「約束して。」と言った。「この子の父親になって。」「それは、最初の約束と矛盾する。」「父親の定義を変えるの」「定義?」

 1、父親は、子どもを1週間に1度は、こうして私…、母親と抱っこする。

 2、父親は、母親と性的な関係を継続する。

 3、父親は、子どもを見届ける。

どう?

安紀は、「うん。」と言って黙った。安紀は、付け加えた。

 4、母親は、もう子どもを産まない。

恵里菜は、「どうして?」と言った。安紀は、「見届けるのが大変になるから。」と言った。今度は恵里菜が黙った。少しして恵里菜が、「それはおかしいよ。」と言うと、「どうして?僕は石川さんの約束を守るために言ってるんだけど?」と珍しく不満げに言う。恵里菜は、「4、第二子以降は、追って話し合う…は、どう?」と言うが、「嫌だ。」と安紀は言う。


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