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頭
恵里菜は、ほんの短い時間、冷静になって、助産師の言葉を聞いていたが、安紀が、いるのに気づくと、「見てる?」とかすかな声で言う。安紀は、「うん。」と短く頷く。そして、「どのくらい苦しい?」と聞くので、恵里菜は、「死ぬほど。」と力なく答える。
どれくらい時間が経ったか、恵里菜は、「うーん、いたーい!」と叫んだ後に、「あっ。」と言った。安紀は、恵里菜が破水したのにすぐ気がついた。少しすると、恵里菜は、また、叫び出した。医者が、恵里菜の開いた足の中を押さえている。安紀は、小さい子は、すぐには外に出られないと読んだことがある、圧力の変化による損傷を防いでいるんだな、と、答え合わせしている。圧力の変化と言う言葉が気に入ったのか、小さく呟く。少しすると、安紀にも、子どもの頭が見える。恵里菜は、ハッハッハッと変な呼吸を、始めるが、安紀は、ああ、逃がしているんだな、と思いつつ、ずっと頭を見ている。
束の間、痛みが引いたのか、しかし、それでも顔を歪めていた恵里菜は、「あ、た、ま」と、確かに言った。それは、周りの医者や助産師ではなく、確実に安紀に向けられた言葉だった。安紀も、圧力という言葉の余韻が残る唇で、「頭。」と返した。




