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約束  作者: 梅子
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不穏

 処置室に通されると、検査された上に、点滴をされた。それでも、恵里菜は、白い顔をして、ただ「痛い。」と言う。看護師が、早く何々病院に連絡して、とかいろいろと話しているのが聞こえる。そして、恵里菜の耳元に来て、「恵里菜さん、今日、もう赤ちゃんに会えるよ。でも、まだ、赤ちゃん小さいから、これから別の大きな病院に移ってもらって、そこで、産もうね。」と言う。恵里菜は、もうどうでもよく、「お腹がすごく痛いです。」と答える。安紀はそんな恵里菜を見ながら、「早産だ。」と小さく独り言を言う。

 そこに、40代くらいの髪の短い、クリーム色のスーツの女性が走り込んできて、「恵里菜ちゃん!」と言う。恵里菜は、さっきまで、痛い、しか言えなかったが、この女性を見ると、「ママ!」と、弱い声を上げる。恵里菜の母親は、涙ぐんでいて、「ごめんね…。遅くなって…。痛い?」と恵里菜の手を握る。恵里菜は、わっと泣き出して、「痛い、痛い。」と、泣きじゃくりながら言う。

母親は、しばらく震える娘の手を握っていたが、看護師に呼ばれて、それでも、恵里菜を見つめながら、少し遠くで頷いていた。安紀は、別の病院に搬送されることを伝えているんだろうな、と冷静に予想して見ていると、一瞬だけ、母親と目が合った。

 救急車が来た。恵里菜の母親は、娘の手を握り続け、「大丈夫、大丈夫、大きな病院なら、安心…。」と繰り返し言っていた。恵里菜は、少し落ち着いて、「うん、安心。」と力なく頷いている。安紀は、もう帰ろうかな?と思うが、これでは見届けにはならない、と困っていると、救急車に恵里菜と母親が乗った。土壇場で、「安紀くんも!」と恵里菜が騒ぎ粘る。「やすきくん?」母親は、やはり一瞬とても不可解な顔をしたが、また、娘が、痛い、と言い出すので、そっちに全ての気がいっている。

 安紀は、初めて救急車に乗った。その珍しさに、キョロキョロしていると、「あまり動かないでください。」と、安紀を特別に乗せてくれた隊員が注意する。安紀は、それでも、キョロキョロする。

 病院に着くと、恵里菜は、ものすごい勢いで運ばれていく。近づこうとしても近づけず、安紀は、「見届けられない。」と小さな声で言った。


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