綻び
恵里菜は、本当にまた来た。ラインもせずに…。ドアを開けると、肩で息をして、腰をさすりながら、「ああ、安紀くん!」と言う。抱きしめてくる俊敏さはなく、ただ、安心したように「安紀くん!」と言った。安紀は、「入って。」と言って、恵里菜をあのベットに座らせた。そして、ベットの横に椅子を置いて、自分はそこに座り、恵里菜を眺めた。「見た目が全然、違う!」と、少し光るような目で言う。「触っていい?」と安紀が言うが、恵里菜は、何も言われる前から、上の服を脱いでいた。
安紀は、隅々まで見てくる。結局、下まで脱ぐことになって、恵里菜は、容赦ない視線と肌寒さに耐えている。お腹が歪な形になっているところを、「これは肘かな?固い。」と安紀は触っている。恵里菜は、ちょっとお腹が痛くなってきたので、「安紀くん、寒い。」と言うと、薄い布団を被せてきて、その下に手を差し込んで、触っている。恵里菜は、しばらく耐えていたが、「お腹痛い。」と青い顔で言う。「今、何週だっけ?」と安紀が言うと、「32週。」と短く答える。安紀は、「じゃあ、陣痛かもしれないね。帰って病院に行った方がいい。」と冷静に言い、手を離してしまう。恵里菜は、その手を引っ張って、「まだ、触ってて!お願い。」と言うと、「何言ってんの?僕が触ってて何になるの?」と冷たく振り払われる。「歩けないかも。」と言うと、「タクシー呼ぶよ。」と、真顔で返す。「お金ない。」「僕、3000円持ってる。」「お腹痛い。」「じゃあ、病院に直接行って、お母さんを呼びな。その方が、効率がいい。」「安紀くんも付いて来て。」「……。」「お願い。」「じゃあ、病院までは。」
恵里菜は、安紀に支えられながら歩いた。




