EP.020
「ぜっっったいに俺から聞いたこと言うなよ?」
今度はアルバートが机を乗り出し低く念を押す。
「もちろん!わかってるわ」
私が即答すると、信じてませんと言わんばかりに、彼は目を細めた。
「本当かな〜…ロゼリア、嘘下手じゃん…」
深いため息をつきながらも、アルバートは観念したかのように声を落として説明してくれた。
「とは言っても、俺も全部を把握してる訳じゃない」
「現公爵…というか、ロゼリアの義両親って言ったほうがわかりやすいな。が、何やら"良くない商売"に絡んでるらしい」
「商売?」
嫌な予感が背筋をなぞる。
「そう。ただ、表向きはただの貿易。裏ではかなり黒い取引が動いてるって噂だ。簡単に追えないようになっていて、今調査中って感じだけどな」
「簡単に追えないっていうのは…」
「義両親の力だけではない。他に、もっと大きな奴らが関わってそう、ってことらしい」
私の家─アルバート公爵家は、元々各地に広大な領地を持つ名門だ。
中でも一際大きな土地があり、そこは、海に近く、この国の貿易の要と言われている要所だった。
彼ら…義両親は、その土地で、あまりよくない商売…所謂、人身売買や高額な密輸など、闇に染まった取引を斡旋しているとのことだった。
「もちろん、ロゼリアのご両親はそんなことはしていないから。ちゃんと、記録が取れてるから安心してほしい」
「ロゼリアのことを金持ちの後妻に売ろうとしていたのは、その事業周りの動きと関わってるって話らしい」
父と母はそんなことをする人達ではない。
両親が関わっていなかった安心よりも、怒りのほうがこみ上げてきていた。
父と母が大切にしていた領地を。
到底許せなかった。
「…その、義両親だけでは難しい、というのは?」
「どうやら、フラテリーニ侯爵家が絡んでいるらしい」
「フラテリーニ…侯爵家の?」
フラテリーニ侯爵家──我が家と同じくらい古くから続く名門の侯爵家で、政界への影響力も強いと聞いたことがあった。
「さすが詳しいな。どうやら、ロゼリアのご両親とは、元々折り合いが悪かったらしい」
「え?そんな話、聞いたこと…」
「というか、一方的に侯爵が敵視していたみたいだけどな」
アルバートは呆れたように肩をすくめた。
「アルベルト公爵家が無ければ、自分たちが公爵位に上がれるとでも思ってたんだろ。そもそも、あの家が侯爵家まで登れたのは前侯爵の働きなのにな」
つまり、今までの話をまとめるとこうだった。
「…元々我が家を敵視していた侯爵家と義両親が、父と母の死を機に、すべてを乗っ取ろうとしている…ということ?」
「ざっと話すとな。…まぁただ、全貌はまだまだ闇の中。調査中なことのほうが多いって感じかな」
私が思っていたよりも壮大な話に、驚きも大きかったが、
それよりも、ふつふつと怒りの気持ちが湧き上がっていた。




