EP.021
私が黙り込んだままアルバートの話について考え込んでいると、向かいからフッ、と笑い声が聞こえてきた。
思わず反射的に顔を上げると、なんだかんだ楽しそうにアルバートが笑っていた。
「え?」
「あ、ごめん。笑ったんじゃなくてさ…なんだろうな」
アルバートはさらに目を細めて続ける。
「ロゼリア、昔みたいに元気になったなーと思って」
「…元気になってる?私」
そう言われ、改めて自分でも振り返っても、自分ではあまり自覚がなかった。
「おう。この城来たとき…っていうかあの日!パーティーで再会した日はおばけみたいな顔してたから」
「ちょっと」
「ごめんごめん、冗談冗談!」
反省している様子はないが、あっけらかんと笑うアルバートに、つられてこちらも笑えてきて。
「俺も一応心配してたからさ。なんだかんだ腐れ縁だし」
「アルバート…」
その言葉に、じんわりと胸が温かくなり、少しだけ、少しだけ感動しかけたその時。
「ロゼリアがいてくれたら、アーサーもレオンも多少緩くなるしな!」
「…あなたって、ほんとに全部を台無しにするのが得意ね」
「え!?」
はぁ、と呆れた顔を作る。
──だが、少し、少しだけ嬉しかったのは嘘じゃない。
(本人にバレるのは癪だから言わないけどね)
アルバートは、私にとっても大切な友人の一人だ。
どちらかという、レオン様やマリアンヌを通じて知り合った関係のため、二人で特別仲良く、というような間柄ではない。
それでも、幼い頃から同じ時間を過ごしてきた相手で。レオン様とも兄とも違った、少し特別な相手なのだ。
「…でも、アルバートってそういう人よね。うん、たしかにそうかも」
「え、何急に。それって褒めてる?」
「褒めてるよ。…ありがとう、教えてくれて。なんとなくわかったかも」
少しだけ私の中で何かが固まった気がした。
「さっきも言ったけど、レオンにもアーサーにも絶対俺から聞いたって言うなよ!?」
「わかってるって!」
アルバートはそれだけ告げると、ソファーを立ち上がり扉へ向かい、部屋から出ようとして、ふと振り返った。
その表情は、先ほどとは違い固く真剣な顔をしていて。
「俺はちょっとこの後会議があるからもう行くけど…」
「今伝えたあいつらの目的は、あくまで俺達が推察したもので、本当の目的はまだわからないんだ」
空気が少し冷える。
「だから──くれぐれも一人で動こうとか考えるなよ」
その言葉と共に、バタンと静かに扉が閉められた。
私はゆっくりと息を吐き、改めてアルバートの話を考える。
(…そうは言っても、ここでぬくぬくと過ごして、みんなに任せているばかりでいられないわ)
迷惑はたしかにかけたくない。力も弱いし、できることも少ないだろう。それでも何か、私が力になることはないのか。
考えは尽きないのであった。




