表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
46/48

episode39

「なんで、ここに」

「凛ちゃんも来てたんだ」

屋上で、響さんと出会った。

私は黒い柵に腕を乗せて夜の街を眺めていたところだった。響さんは革靴をコツコツと鳴らしながら近づいてきた。そして隣に立ち、同じように腕を乗せた。

「凛ちゃん、久しぶりだね」

響さんは街を見たまま呟いた。私は下を見てるだけ。

「そうですね」

いつから会ってないだろうか。そこまで時間を置いたつもりはないのに、まるで何年も会ってないみたい。ふわっと桃のような甘い香りがした。

「見て。車があんなに小さいよ」

響さんは指差した。

「ほんとですね。いつもはあんなじゃないのに」

「あの高い建物、うちかな」

「なわけないでしょ。ここからなんて見えませんよ」

「そうかな〜。なけなしの財産で買ったからよく見えるはずだぞ」

「出たマウント男」

チラッと隣にいる響さんを見た。同じタイミングで目が合った。私はすぐに目を逸らしたが、ずっと視線を感じる。

「響さん」

「ん?」

ピクッと眉毛を上げた。少し垂れた目が甘えていた。

「ひとつ、聞きたいことがあって」

「なに?」

もう全ての動作から目が離せない。私は意を決して、あの出来事を聞こうと思う。

「私、響さんが退院した日に病院に行ったんです」

「うん」

「それで、その.....見ちゃったんです———



キスしてるところ」



「.....うん」

響さんの視線が離れた気がする。長い黒色のロングコートが冬風になびいていた。私がまだ返していないコートとはまた別のものだった。

「なんで、キスしたんですか?」

「.......」

「答えてください。結局、私みたいな子供じゃなくて、髪も長くて足が長くて顔が小さい品のある女性が好きなんでしょ!?あの人見れば分かるよ......!」

私は響さんを見上げた。何も言わずに、眉を寄せて困った顔をしていた。綺麗な二重目に少し意地悪な唇。

その、唇で......

「あれには訳があって」

「普通、付き合ってる人がいるのに他の人とキスする!?」

「凛ちゃん、話を聞いてくれ.....」

「私はしないです」

「だから話を———」

「しばらく、距離を置きます。もう顔も見たくない」

こんな人、もっと前から大人な女性が好きだった。私はまだ子供で、響さんとなんか釣り合わない。

頬に涙が溢れた。下唇を噛み締めると、しょっぱい味がした。

「......」

何も言わずに屋上から逃げた。扉の前まで来ると、扉に反射してロングコートを着た響さんが写っていた。ここから離れないと、離れないと。



ガチャ



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ