episode34
「はぁ......」
小さくため息を吐いた。大学帰りの駅のホームはほとんど人がいない。
「あ」
目の前の踏切が鳴り、ゆっくりと下がっていった。いますぐ渡ろうとしてたのに。
私は踏切の手前で止まり、ふと視線を落とした。手にはスマホと傘があった。この傘、響さんから貰ったものだ。灰色に、白色のストライプが入ってる。なんだか私を表したような柄だった。
「もしもし?」
電車が通り過ぎるのを待っていると、響さんから電話がかかってきた。
『いま、大丈夫?』
耳元でくすぐられた。
「大丈夫です。どうしたんですか?」
『いや、声聞きたくなって』
「さっき会ったじゃないですか」
『いいじゃん別に』
「......いまさっき、後輩に告白されたんです」
『......そうだったんだ』
「もちろん、断りましたから!」
『え?断ったの?』
響さんの反応は、思ってたのと違った。もっとこう、”えっ?俺のためにありがとう!”的なノリが来るのかと思ってた。
「だって私は彼氏いるし」
『......そっか。そうだよね』
「なんか響さん、また身体悪くなりました?」
『いや、そんなことないよ』
「そうですか。じゃあ、また明日行きますね」
『あ、明日はさ!丸一日検査があるから、大丈夫』
「え、でも......」
『それじゃ、また連絡するね。おやすみ』
「お、おやすみなさい」
電話が切れると同時に、踏切が開いた。真っ暗な空が余計自分の気持ちをズドンと落としてくる。ちょっぴり不思議な気持ちにもなった。なんで響さんは、あんな感じなんだろう。私だったら、響さんに告白する人がいたら気にしちゃう。
宮野くんは、よく絡んでくるし、いちいち大袈裟なリアクションばかり。だけど、人一倍研究には熱意があって、知らないことにも手を出すチャレンジャー。
宮野くんのいいことは尽きないけれど、私はそんなことよりも、響さんのことを考えてる方が幸せ。
帰路の途中、何度も傘を見た。
ガチャン!
マンションの扉が勢いよく閉まった。
「はぁ!」
手も洗わずに、服も着替えずに、コンクリート製の床の玄関に靴だけ置いてソファに直行した。今日の夜ご飯とか、もういっか。私はヤケクソになり、食品棚から選抜したカップラーメンを食べることにした。
お湯を沸かしている間に、ウッド柄の床のベランダに出た。
「.......」
もうすぐ訪れそうな冬の夜風が、静かになびいていた。




