episode31
「いま、なんて.....」
「凛さんが好きなんです」
「......」
私は、何も言えなかった。
ただ手元だけが熱くて。
「宮野くん、あのね———!」
「俺なら、凛さんを泣かせません」
思わず言葉に詰まる。
こんな私に、そんなこと言うなんて、とっても嬉しい。
だけど私には、あの人しかいないの。
「宮野くん私ね......彼氏いるの」
「......知ってます」
「えっ!?」
宮野くんは息を呑んだ。
「俺が凛さんを抱きしめた後、窓の外を見ると、凛さんが誰かとハグをしているのを見ました」
「う、うそでしょ。恥ずかしい.....」
その時借りた響さんのコートは、クリーニングに出して家に置きっぱなし。
「あの人がね、私の今愛してる人なの」
「......一度、考えて欲しい」
宮野くんの目に嘘はなかった。
「......分かった」
いつの間にか宮野くんの手は離れていた。
私はカバンを持ち直して研究室を後にした。
「はぁ......」
その後、まっすぐ家に帰った。超特急で手を洗ってソファに寝転んだ。
今日はどっと疲れた1日だった。
部屋で音楽をかけながらなんとなくスマホの通知を確認した。
“今度のご飯屋さんどーする?”
裕奈から連絡が入っていた。
“大学近くのとこ予約しとくよー”
返信してまたスマホを閉じた。
腕を組んで天井を見上げた。
ピロン!
「はいはい......!?」
通知は、響さんのからだった。
“りんちゃーん”
私は返信した。
“はーい”
“いま暇?”
“暇でーす”
“電話していい?”
“どーぞ”
そのすぐ直後に、響さんから電話がかかってきた。
「もしもし」
『やっほー凛ちゃん』
「どうしたんですか?」
『ただ声聞きたくなった』
「そうですか。身体の具合はどうですか?」
『ずっと寝てるから重い』
「それじゃ、たまに起き上がって背伸びでもしてください」
『ありがとう』
「.......」
『.......』
「響さん」
『ん?』
「いま、会いに行ってもいいですか」
『......こっそりね』
私は電話を切って響さんのコートを着た。そして、全速力で家を飛び出した。
なんでか分からない。けど今すぐ響さんに会いたくて仕方がない。会って話したい。目を見て話したい。
「すみません!!」
たまたま近くを通りかかったタクシーを止めて、乗り込んだ。
「ここの病院までお願いします!」
「かしこまりした」
タクシーは私を乗せて夜の街へと消えた。
すでにお金は握りしめていた。
「900円です」
「これでお願いします」
「ちょうどお預かりします」
運転手さんが言うなり、扉が開いた。
「またのご利用お待ちしておりまーす」
コツンと音を鳴らすと、病院の入り口にいた。
「響さん......」
「凛ちゃん」
「......ん〜!!!!へへっ!」
「ははっ」
私は思い切り響さんに抱きついた。
「もうずーっと会いたかったです!」
「昼に会ったのに?」
上を見ると、すぐそこに響さんの笑った顔があった。
「家に帰って誰もいないと、ちょーつまんない!」
「俺がいた方がいいってこと?」
「そういうこと!」
「どうしたの凛ちゃん!」
私はさらに強く響さんを抱きしめた。
「好き!だいだいだいだーいすき!!!」
「はいはい俺もだよ」
身体中が、響さんの匂いで包まれた。




