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episode28

「えっ?」

「あ、いや、その......知り合いの名前だったので!聞いてみただけです。すみません。ごゆっくりして行ってください」

「は、はい」

綺麗な店員さんは少し耳を赤くして厨房の方へ行ってしまった。

「なんなのあの人?凛の知り合い?」

「いや、全然知らない人だけど.....」

「そっか。あの人の聞き間違いじゃない?」

「だよね!」

それならいいんだけど。

なんだか胸の奥でモヤモヤが残った。





「んん!!!美味しかった!もうそろ行こ〜」

「おっけ!」

私たちはパフェを平らげてレジに向かった。

大学生だけど、バリバリの割り勘でいく。私たちは未だに高校生スタイルだよ。

「これでお願いします」

って、これまたなんで、店員さんがよりによってあの綺麗な人なのよ。

なんか気まずい。

「ごめん凛!ちょっとトイレ行きたいから払っといて!」

「あー分かった」

裕奈は小走りでまた店の中へ戻った。

「ちょうどお預かりしますね!」

「......」

私は下を向きながらお辞儀をした。

裕奈はまだ時間がかかるでしょ。だから外で待っていよっと。

響さん、まだ起きないのかな〜。

早く起きて、お喋りしたり、ぎゅーってしたりしたい。

こんなこと、本人の前では絶対に言えないけど。

「あの!!」

「あなたは.....」

「すみません、呼び止めてしまって」

「どうしたんですか?」

「さっき聞いた、京本響って.....あの」



「私の彼氏ですが、何かありますか?」



「あ、そうだったんですね」

「あなたは一体.....」

「私は———」

店員さんが言いかけたとき、裕奈がトイレから戻ってきた。

「ごめん凛〜!早く行こ!」

「あ、うん」

「この店員さん。凛もう行こうよ」

裕奈は早歩きで店を出た。

私も裕奈について行った。

しばらくして後ろを振り返ると、もうすでに彼女はいなくなっていた。

普通に堂々と、私の彼氏ですとか、言っちゃったよ!

もう全然知らない人なのに。

「午後の授業めんどくさーい」

「それな」

2人で大学に向かっていると、スマホが鳴った。

画面を見てみると、知らない電話番号からだった。

「もしもし?」

『浦田凛さんのお電話で間違い無いでしょうか?』

「はい」

この電話って、もしかして.....



『京本響さんのことですが、先ほど目を覚ましました』



「ほんとですか!?!?いま行きます!!!」

響さんが......

「京本起きたって?」

「うん!!!ほんとによかった.....」

私は安堵してスマホを下ろした。

「行ってきなよ」

「へ?」

「大学にはうちから言っとくから。次って確か研究室でしょ?」

「そうだけど」

「なら京本に会いに行きな」

「裕奈.....私、行ってくる!!!」

私はカバンを裕奈に渡してスマホと財布だけを持ち全速力で走った。

「はぁ、はぁ、はぁ!!!」

響さんが目を覚ました。



『凛ちゃん』



あの声が、やっと聞ける。

まず最初なんて言おう。

怪我をさせてごめん。

目覚ましてよかった。

ずっと待ってた。

早く家に帰ろう。



大好き。



言うことがたくさんあって、会っても言い切れない。

「すみません!乗せてください!!」

「どちらまでですか?」

「角を曲がってまっすぐ行ったところの病院までお願いします!!」

「かしこまりました」

たまたま運良く来たタクシーに乗った。

しばらく、呼吸を整えた。





「ありがとうございました!」

「またのご利用お待ちしておりまーす」

扉が開くとともにまた全速力で走った。

「すみません!!乗らせてください!」

エレベータに乗る寸前で閉められた。

「もう!!!」

私は横にある階段で急いで上に上がった。

響さんがいるのは4階。

「はぁ、はぁ、はぁ———」



ガチャン!!!



「響さん!?!?」

私は荒い呼吸のまま病室の奥に入った。

「響さん?」

もう一度名前を呼ぶと、1人の男性が振り向いた。

「あなたは.....」



『凛様、お寒い中足を運んでいただきありがとうございます。本日はごゆっくりお過ごしください』



「嵐さん?」

そこには、前に響さんの家に行った時にいた荷物を預かってくれた人がいた。

名前は、嵐。

「凛様。どうも。京本響の秘書をしております。嵐と申します。先ほど、目を覚まされましたが、すぐに眠ってしまいました」

「そうだったんですね。ありがとうございます」

視線を響さんに移すと、すぅ、すぅ、と眠っていた。

「よかった.....」

朝見た時よりも、気持ちよさそうな顔をしていた。

私は近くの椅子に座って、響さんの手を握った。

「.....凛様」

「なんでしょうか」

「京本さんが、目を覚まされた時の一言目」

「え?」

「”凛ちゃんは?”と」

私は視線の先を、嵐さんからまた響さんにやった。

「ばーっか.....」

私は響さんの手を握ったまま顔をくっつけた。

「凛様」

「はい?」

「京本さんから頼まれていまして、お話ししたいことがあります」

「話したいこと、ですか?」

「はい。主に、京本様の過去についてです」

「........」

私は息を呑んだ。


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