episode22
「それじゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃい」
「えぇ?」
「ん」
「.....はいはい、行ってきます」
響さんは手を軽く上げて振ってくれた。私も小さく手を振って玄関を後にした。
「よしっ!」
響さんも今日は朝早くから仕事。私も大学。お互い頑張らないと。でも、夜には一緒に夜ご飯、、、。ちゃんとおめかしして、いい感じの服を着ないと。一回家に帰って、バッグと靴と服を変えて、化粧もしなきゃだから.....って、やること多過ぎでしょ。
私は有線イヤホンで音楽を聴きながら駅までの道を歩いた。いい感じの原っぱと川が広がっていて気持ちがいい。恥ずかしいけど、朝の光を浴びながら浸るのは最高すぎる。
すると、後ろからソッと、肩を叩かれた。
「凛?」
「うわっ!だれ!?」
「俺、だけど」
「松田くんかぁ。もうびっくりさせないでよ」
そこには、同じバ先の同級生、松田隼人がいた。大学生には似合わないようなロングコートに紺色のマフラーをつけていた。
「松田くんもこの辺に住んでるの?」
「うん。今から大学」
「大学もこの辺なの?」
「いや、大学はもっと遠くの方」
「そうなんだ〜。じゃあ駅まで一緒に行く?」
「.....うん」
こうして、たまたま会った彼と最寄り駅まで歩いて行くことにした。松田くんは本当にスタイルが良くて目を見張る。その隣で歩く私が本当に惨めで辛くなる。
「今日って何時まで大学?」
「夕方で終わる!」
「そっか。じゃあさ.....」
プルルルル!
「あ、ごめんちょっと。もしもし?どうしたの?」
松田くんと話している最中に、バッグにしまってあるスマホが鳴った。確認すると、響さんだった。
「あぁ〜ごめんごめん連絡気づかなくて。夜ご飯?そうだなぁ.....ラーメンとかは?え?だって脂っこいもの食べたい気分ですもん。ほんと!?やったー!では夜に駅で待ってますね!はいはーい.....話途中にごめんね。何か言いかけたよね?」
松田くんの方を見ると、目線をグッと下げていた。でもすぐに前を向いた。その瞬間、目が合った。綺麗な茶色の瞳孔が視界に広がった。
「いや、なんでもない。電車遅れちゃうから行こう」
「あ、うん」
なんだか、今この瞬間だけ、胸が小さくなった。
依然として、松田くんはいつものような顔をしていた。でも少し心配そうな感じもしていた気がする。ただの気のせいかな?よく分からないけど。
「松田くん将来はなにになりたいの?」
「将来は、親の家業を継ぐつもり」
「そうなんだ〜。ご両親は何やってる方なの?」
「父親は出版系の会社を経営しているんだ」
「すごっ。めちゃめちゃ優秀じゃん」
「そうかな」
「いやすごいでしょ!それを継ぐって、もしや、相当頭いいなぁ?って、そんな驚かないでよ」
私たちは寒い街を、一緒に歩いた。




