04 お店はたくさんあるけれど
お店の出入口から外へ出る。玄関はお店と共用らしい。そういえば私の服や靴はなぜかこちら風のカントリー調なワンピースとかになってた。これも女神さまが用意してくれたのかな?
一歩外へ出ると外国の田舎という言葉がぴったりだ。土を固めた道路。道の端には草花が生えている。木もあちこちに見える。家はどこもログハウス風。なんかアイリんちへの特別感が消えちゃったけど別荘地やキャンプ場と思えば大きな違和感はなかった。
「こっちだよ」
お兄さんに手招きされてついていく。買い出しの品を確認しつつキョロキョロしてしまうのはしょうがないよね?だって初めて来たところなんだもん。
「こっちだって……ユイナは目を離せないな」
遅れがちになってしまう私の手をお兄さんが握った。
「ちょ、一人で歩けますから!」
「今の調子だと市場までどれくらいかかるかわかんないよ」
一瞬ときめいたものの明らかに迷子防止だよね……ちょっと悪いなぁと思いつつなるべく余所見をしないように努力した……つもりだ。
市場はのんびりとした雰囲気で屋台とかテントが張りだされ品物が並んでいる。この市場が町の中心らしい。公園のような広場の周りをぐるりと取り囲むようにお店が並んでいた。
「おおおぉぉ!本物のマルシェだぁ……!」
感慨に浸る間もなく手を引かれて買物をする。家にあった分だと明日のサンドイッチに足りないもんね。
それにしても果物も野菜も色艶がいい。きらきらして見えるよ……美味しそう。私がじっと果物を見ているとおばちゃんが一つサービスしてくれた。ジャムを仕込むためにイチゴが欲しかったからここで買うことに。商売上手だなぁ。ベーコンは家にある分で足りるらしい。塊で買うと家に届けてくれるからまだ残っているんだって。
二人で手にいっぱいの荷物を持つ……持ちきれない。レタス一玉、イチゴと砂糖が一キロずつ。それに玉子が二十個。こちらではビニール袋なんて当然ないため持ち運びが不便だ。まわりを見ても網カゴを持ったおばさんや木の箱を持った男の人はいるけど手提げ袋はないみたい。布の袋の方が色々入れやすくていいのになぁ。
「さぁこれで全部だね。遅くならないうちに帰ろう」
「あのぉ……お兄さん。よければ雑貨屋を見たいなーなんて……」
私は雑貨が好きだ。寝ることよりも大好きな私の趣味……それはハンクラ(ハンドメイド&クラフト)!小さなころから自分でものを作ることが大好きなの。高校生になってから始めたバイトのお給料は全部ハンクラの材料や道具、本に消えたと言っても過言じゃない。まぁそんなに稼げたわけじゃないから100均の素材にはお世話になりっぱなしで……異世界に来てまでお世話になるとは思わなかったけどね!
そんなわけで作るのが好きなら見るのも好き。そんな私が異世界の雑貨屋さんを楽しみにしてしまうのは当然だと思う。
「雑貨屋……?食器とかなら家に余ってるから間に合うよ」
「そーゆーことじゃなくて!いえ、それはありがたいんですけど単純に好きなんです。ちょっとでいいから見てみたいんです!!」
それならあんまり時間はかけられないけどと前置きされて、雑貨屋のある通りを歩いて帰ることにしてくれた。
「雑貨屋が好きなんてユイナは面白いね」
「そうですか?女の子なら好きな子は多いと思いますが」
「そんなもんかなぁ……アイリも別段好きじゃなかったと思うけど」
えー。アイリせっかくほんわか癒し系でかわいいのに。雑貨屋さんとか似合うのにー。
「お兄さんも興味ないですか」
まあ男の人はあんまり興味ないかな?
「うーん……特には……ところでお兄さんって呼び方止めない?」
「え?」
「だって俺はユイナの兄じゃないし。敬語もいらないよ」
それはそうなんだけども。
「俺はカイリだよ」
そう言えばお兄さん……カイリの名前を初めて聞いたな。カイリとアイリ。兄妹だから似た名前にしたのかな?
「わかったわ、カイリ」
こそばゆい気がしないでもないけどそんな気分は「あそこが雑貨屋だよ」の一言に吹き飛んだ。
わくわくしながら早足で近づく。でもこの気持ちもまた吹き飛ばされた。
……雑貨屋、なんだろうけど…………大きな間口に扉は無くて店全体が見渡せる。天井からぶら下がった鍋やフライパン。棚に並んだ食器類。箱の中に立てかけられているのは箒。これは生活雑貨であって私の思うパステルカラーの文房具や布小物、アクセサリーが並ぶような店ではなかった。
うあああぁぁぁぁ!がっかりだ!わくわくした分なおさらがっかりだよ!
「どうしたの?」
カイリに罪はない。だけど……うぅぅぅ。
「あの……こーゆー雑貨屋じゃなくてね……」
私の思う雑貨屋を説明してもカイリは首を傾げている。
「布が欲しいなら三軒向こうの店だよ」
ちぐはぐな噛み合わない答えに危機感を覚える。布屋を見てみれば無地の布がずらりと並んでいるだけでフリルもリボンもない!こんなことって……こんなことってぇぇぇ!!
「ユイナ?ユイナってばどうした!?」
お兄さん……カイリに揺さぶられて、溢れる寸前だった涙が零れる。そうしたらもう止まらなくなって……往来のど真ん中で私は泣きだしてしまった。
驚いたカイリは泣きじゃくる私をなんとか宥めたり通行人にじろじろと見られながら家へと連れ帰ってくれたらしい……ごめんなさい。
正直不定期すぎる更新しかできないので……気長に見てもらえたら嬉しいです




