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02-食う寝るところに住むところ

 あうう。お恥ずかしい。同性だったのが救いかなぁ。これがイケメンの前なら爆死する……


「お腹空いたの?食べれそうならパンがあるけどどうかしら」


 少しタレ気味の優しい目を細めて笑ってくれる。癒し系のほんわかタイプ。思わずお願いしますと返事をしてしまいました。



 私の寝かせてもらっていた部屋は二階だった。どこもかしこも丸太や木の板で作られた内装を眺めながら階下へ案内される。憧れのログハウス風のおうち。しかもこのいい匂いからして家でパンを焼けるのだろう。万歳スローライフ!



「アイリ、お客様はお目覚めかい?」


 急に聞こえた男性の声にびっくりする。


「うん、お兄ちゃん。パンと……スープまだあったよね?」


 アイリ。それが彼女の名前なのだろう。そしてお兄ちゃんと呼ばれる男性。アイリと同じ色の髪、少し細いけどやはりやや下がりめの目。どこからどう見ても兄妹だ。柔らかな笑顔が眩しい。


「俺が持ってくからキッチンに案内してあげな」


 ペコリと頭を下げてアイリの後を追う。今にも騒ぎ出しそうな、お腹の虫の音を聞かれたくはない。


「さ、ここに座って……えーとなんて呼んだらいいかしら?」

「あ、結奈です」

「ユイナね!今スープをよそうから待っててね」


 勧められたイスに座って待つこと三分。温かそうな湯気をたてたスープが置かれる。一口食べれば止まらなくなる。


「んー!おいし!」


 温かい食べ物って人を幸せにするよね!アイリも私の食べっぷりを見て微笑んでいる。アイリが作ったのかな?可愛いうえに料理もうまいとは素晴らしい!


「パンが焼けたよ」


 お兄さんが持ってきてくれたパンは焼き立ての香り。いいタイミングで目が覚めたなー。

 恥ずかしながら二人と話すことも忘れて夢中で食べてしまった。だってお腹が空いてたところにこの美味しさだもん、仕方ないよ。

 食後にと出されたホットミルクはほんのり甘い。向かい側に座って二人もミルクを飲んでいる。私が落ち着いたのを見計らって声をかけてくれた。


「お腹も落ち着いたみたいだしお話してもいいかな」


 話の主導はアイリのようだ。同性の方が話しやすいからありがたい。


「ユイナはどうしてあんなところに倒れてたの?この辺で盗賊や魔物は最近出てないから襲われたってことはないと思うけど……旅人にしては軽装よね」


 盗賊に魔物!?流行りのファンタジー映画かゲームの中でしか聞かないような言葉。そしてゲームのようだと思ったところで気が付いた。


「あの……ここってオオタルニカ……」

「うん。オオタルニカ王国だけど……」


 夢だけどー!夢じゃなかったー!!えええええ!!!ホントに?あのちっちゃい女神さまの言ったことは本当だったの!?

 つまり、私は死んだんだ……


「ユイナ、大丈夫?」


 心配そうに覗き込んでくるアイリ。うう。何はともあれここで生きていかなくちゃいけないんだろう。幸いにして目の前の兄妹は悪い人たちではない。むしろ得体のしれない私を介抱してくれたあたりいい人なのかもしれない。私は小さい女神さまのことをありのまま話した。


「それで、気が付いたらここにいて……」


 二人の視線が少し険しい。そ、そうだよね。普通ならこんな話信じないよね?でも魔法がどうのって言ってるくらいなんだからこんなことはよくあることじゃないのかな。珍しいのかな。


「ごめんなさい、ユイナ。ちょっと信じがたいっていうか……」


 あ、やっぱり。そうだよね……ひょっとして言わなかった方がよかったのかな。


「でもさ、それが本当だとしたらユイナはこれからどうするの?行くあてはあるのかい?」


 おおう。異性に呼び捨てされちゃったよ!ちょっとドキドキするね!生前……今も生きてるけど、前の世界じゃそこまで親しい男友達なんていなかったもん。彼氏?きかないでよ!

 それにしても行くあて……あるはずがない。女神さまがお金をくれたけどこれでどれくらい暮らせるんだろ?働かなくちゃいけないんじゃ……

 黙ってしまった私に二人は助け舟を出してくれた。


「ユイナがよければしばらく家にいたらいいわ」

「そうだね。何も知らない女の子一人で放り出すのはさすがに気がひける」


 ホントですか!地獄に仏!異世界に癒し兄妹!


「ただ、うちもあまり裕福じゃないから……充分なおもてなしができなかったらごめんね」


 おもてなしだなんてとんでもない。居候になるんだから家賃を払うとか早く自立するとか。とにかくがんばらなくちゃ!


「ありがとう……お世話になります」


 とりあえず住むところの心配はなくなった。なんでも数年前にご両親は亡くなっていて部屋も空いているらしい。


「あの……宿泊費ってゆーかお家賃ってどのくらい払えばいいのかな。一応お金はあるけどこれでどれくらい暮らせるものなんだろう?」


 20万s(セズという単位らしい。日本でいう円だね)はあるけどそもそも実家暮らしの高校生。家賃の相場なんて聞いたことのもないしこっちの世界でも同じくらいでいいのか見当もつかない。


「それだとこの辺でちょっといい仕事してる人の一ヶ月分のお給料だわ」


 つまり一ヶ月、節約しても二ヶ月ももたないってことでは。これは早急に働かなくちゃ。異世界から来た人間でもできる仕事ってあるのかなぁ。


「仕事ねぇ……うちがもっと流行っていればお手伝いしてもらえるのにね」


 その話しぶりだとここはお店屋さんなのかな?


「うちはね、パン屋なんだよ。俺が店長兼調理人なんだけど……今はちょっとね」


 言いよどむお兄さんに話を聞いてみたらなんでもすぐ傍に新しいパン屋が出来てお客さんをとられているらしい。


「俺が不甲斐ないばかりに……アイリには申し訳なくて」

「お兄ちゃんのせいじゃないよ。そもそも私が原因なんだから私がここを出ていけば……」

「そんなの駄目に決まっているだろ。そもそも出たとしてどこへ行くっていうんだ。万が一出るなら兄妹一緒にだからな」


 おお、これってなんだかわけあり??

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