表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
43/50

第38話 解けた封印

翌朝、陸のスマートフォンに、白澤からの通信が届いた。

『陸、緊急だ。今すぐ、話を聞いてくれ』

「どうした、そんなに慌てて」

『儂の中の、"封印"が解けた。……これまで、どうしても語れなかったことが、今なら話せる』

その言葉に、陸は息を呑んだ。

「教えてくれ」

『まず、殺生石のことだ』

白澤の声は、これまでになく、はっきりとしていた。

『うぬらが探していた、行方不明の勾玉。八尺瓊――その正体は、殺生石そのものだ』

「勾玉が……殺生石」

『そうだ。玉藻が命を落とした夜、その因子の残滓が、石という形に凝固した。それが、殺生石として、これまで語り継がれてきた』

陸は、これまで積み重ねてきた情報が、一気に繋がっていくのを感じた。

『そして、あの石には、一つの制約がある。九尾因子を持つ者――つまり、うぬと、三輪玲。この二人にしか、触れることができない』

「なぜ、そんな制約が」

『あの石は、玉藻の力の中でも、最も凶悪な部分そのものだ。触れた者を、容赦なく死に至らしめる。……九尾の因子を宿す者か、本人以外には、触れることすら許されない』

白澤は、一拍置いて、続けた。

『そして、今――玉藻自身が、その場所へ向かっている』

その一言に、陸の心臓が、大きく跳ねた。

「母が、殺生石に……」

『儂の見立てでは、玉藻は、自らの意志で、千年続けてきた生に、区切りをつけようとしているのかもしれん』

「区切り、って」

『分からん。ただ、確かなのは――彼女が、動き出したということだ』

陸は、拳を強く握りしめた。

「讓治も、そこに向かうはずだ」

『恐らくな。あの男は、まだ諦めていない』

白澤の声に、これまでにない緊張が滲んだ。

『陸、覚悟を決めろ。これが、千年の因縁の、本当の終着点になる』


通信を切った後、陸は、すぐに玲へと連絡を取った。

「玲、聞こえるか」

『……陸か。何かあったのか』

「母が――玉藻が、殺生石に向かっている」

しばらくの沈黙の後、玲の声が、静かに返ってきた。

『……ああ。俺も、なんとなく、そんな気がしていた』

「一緒に、行かないか」

その問いに、玲は、少しの間、答えなかった。だが、やがて、はっきりとした声で、応えた。

『ああ。今度は、俺の意志で』

その言葉に、陸は、確かな手応えを感じた。

体の内側、オロチの頭たちが、静かに、しかし確かな熱を帯びていく。牙、剛、癒、疾、呪、静――そして、第八。

全ての頭が、今、初めて、同じ方向を見ていた。

「巡、悠人。準備してくれ」

陸は、天叢雲を手に取った。

「殺生石へ向かう」

窓の外、朝日が、静かに昇り始めていた。千年の因縁の、最後の幕が、今、開こうとしていた。

(第39話へ続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ