表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/50

第21話 悠人、動く

「陸、ちょっといいか」

朝の稽古を終えたばかりの陸に、悠人が声をかけてきた。手には、ノートパソコンを抱えている。

「どうした」

「昨日から、儂……いや、俺なりに、色々調べてみたんだ」

悠人は、縁側に腰を下ろすと、画面を陸に見せた。いくつもの掲示板、ニュースサイト、そして専門的な業界情報が、几帳面に整理されている。

「三輪総合警備保障、あの会社の周辺情報。表向きの事業内容から、取引先、それに──最近、やたらと海外との出張が増えてる幹部の名前まで」

「これ、全部お前が?」

「一晩で集めたにしちゃ、上出来だろ」

悠人は、少し得意げに笑った。だがすぐに、表情を引き締める。

「正直、恩を返したかったんだ。里に世話になってばかりじゃ、居心地が悪いしな」

陸は、その言葉に、少し驚きながらも頷いた。

「助かる。これ、白澤にも見せていいか」

「もちろん。……というか、あいつにも、直接聞いてみたいことがある」

悠人はそう言うと、陸のスマートフォンを覗き込むようにして、白澤との通信を開いた。

『おっ、珍しい組み合わせだね』

「白澤、聞きたいことがある」

『はいはい、なに』

「あんた、この会社の海外事業について、何か知ってるか。俺が集めた情報だと、ここ数年で、明らかに規模が拡大してる」

『……ほう。うぬ、思ったよりやるじゃないか』

白澤の口調に、わずかに感心したような響きが混じった。

『正直、儂もそこまで詳しくは追えてない。ただ、噂程度には聞いてる。あの組織、日本国内だけじゃなく、海外の"似たようなもの"とも、取引してるらしいってな』

「似たようなもの?」

『さあな。それこそ、うぬの情報網の出番じゃないか?』

その挑発めいた物言いに、悠人は苦笑した。

「言うじゃないか、白澤さんよ」

『儂に喧嘩売ってるのか、うぬ』

「売ってねえよ。ただ、負けてらんないなって思っただけだ」

二人のやり取りに、陸は思わず笑ってしまった。

「お前ら、思ったより気が合いそうだな」

『は? 冗談。こんな半人前と』

「同意見だ。こんな古臭い喋り方の奴と」

そう言い合いながらも、どこか楽しそうな空気が、二人の間に漂っていた。


その日の午後、悠人は自ら志願して、里の資料整理を手伝うことになった。

「へえ、こんな記録まで残ってるのか」

古い書物を捲りながら、悠人は感心したように呟いた。

「気になるものがあったら、教えてくれ」

「ああ。……にしても、俺、ここまでする義理、本当はないんだけどな」

「そうか?」

「ただの情報屋だぞ、俺は。妖怪の因子も持ってない、ただの学生だ」

その言葉に、陸は何も言わなかった。ただ、悠人の横顔を、少しの間だけ見つめていた。

(本当に、そうなのか)

その疑問は、まだ誰にも、悠人自身にさえも、答えの出ていないものだった。

「まあ、いいさ。手伝うって決めたんだ、最後までやる」

悠人は、そう言って、また書物に向き直った。その横顔には、これまでにない、何かに真剣に取り組む者の表情が浮かんでいた。

(第22話へ続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ