第17話 ソロモンの知恵、王国の分裂、炎のエリヤ
知恵の王ソロモンが出てきます。
しかし知恵があっても国は割れ、預言者エリヤが炎のように登場します。
賢さだけで人間が救われるなら、歴史はもっと静かだったでしょう。残念でした。
第六章 ~ ソロモン ~ 最高の知恵と、最大の皮肉 ~
ダビデの後を継いだのは、息子ソロモンだ。
ソロモンが王になったとき、神が夢の中に現れて言った。
「何でも願いなさい。与えよう」
どんな願いでもいい。この世で最高の申し出だ。
ソロモンは考えた。
「わたしは若く、どうすればいいかわかりません。どうか善悪を判断する知恵をください。そうでなければ、この大きな民をどうやって治められますか」
神は言った。
「長寿も、富も、敵の命も求めなかった。判断する知恵を求めた。あなたの願いを叶えよう。これほどの知恵を持つ者は、あなたの前にも後にもいない。さらに、求めなかった富と誉れも与えよう」
ソロモンの知恵がどれほどのものか、有名な話がある。
二人の女性が一人の赤ん坊を抱えてソロモンの前に来た。
一人目が言った。「この子はわたしの子です。夜、あの女が自分の子を圧死させてしまい、眠っているわたしと子供を入れ替えたのです」
二人目が言った。「違います。生きているのがわたしの子で、死んだのがあなたの子です」
どちらも「自分の子だ」と譲らない。証拠もない。
ソロモンは言った。
「剣を持ってこい。生きている子を二つに切って、二人に半分ずつ与えよ」
一人目の女が叫んだ。
「切らないでください! あの人にあげてください! 殺さないで!」
二人目の女は言った。
「どちらのものにもしなくていい。切りなさい」
ソロモンは言った。
「切るな。最初の女に渡せ。彼女が母親だ」
「わが子が死ぬくらいなら相手にあげる」と思った方が本物の母親だ。
ソロモンの判決は全イスラエルに知れ渡った。
民は「これほどの知恵を持つ王がいる」と恐れ敬った。
ソロモンはダビデの悲願だった神殿を建てた。七年かけて完成させた。
豪華絢爛な神殿だった。その後、別に十三年かけて自分の宮殿も作った。神殿より時間をかけている。
シェバの女王がはるばる会いに来た。「あなたの知恵の評判を聞いて、本当か確かめに来た」
謎を全部出した。全部解けた。
女王は言った。
「聞いていた話は本当の半分もなかった。あなたは噂を超えていた」
そして金と宝石と香料をたくさん置いていった。
ソロモンは世界中の王に知恵を求められ、金を集め、栄華を誇った。
ここまでなら完璧な王だ。
しかし、そこに問題があった。
ソロモンは女性が好きすぎた。
妻が七百人、側室が三百人いた。
しかも多くが外国の女性で、その女性たちが自国の神々を持ち込んだ。
ソロモンは年老いるにつれ、妻たちの神々を拝むようになった。
知恵を与えてくれた神を、晩年に裏切った。
皮肉というほかない。
神が言った。
「あなたはわたしとの契約を守らなかった。王国を引き裂こう。ただし、父ダビデのことを考えて、あなたの代ではなく、息子の代に行う」
世界最高の知恵を持った男が、なぜ最後に失敗したのか。
「知恵がある」と「正しく生きる」は、別のことだ。
旧約聖書が繰り返す問いが、ここでも刻まれる。
第七章 ~ 王国分裂 ~ 北と南に割れた日 ~
ソロモンが死んだ。
息子レハブアムが王になった。
民は新しい王に言った。
「父上ソロモンはわれわれに重い荷を負わせました。どうかその荷を軽くしてください」
レハブアムは長老たちに相談した。
長老たちは言った。「民に優しく答えなさい。そうすれば民はずっとあなたのものになります」
次に若い友人たちに相談した。
若者たちは言った。「父上よりもっと重くすると言ってやれ」
レハブアムは若者たちの言葉を選んだ。
「父はムチで罰したが、わたしはサソリ(トゲのある鞭)で罰してやる」
民の反応は明快だった。
「ダビデの家とは関係ない! 我々の天幕に帰れ!」
十部族が北に離れ、別の王国を作った。北イスラエル王国だ。
ダビデとソロモンの血を引くエルサレムには、二部族だけが残った。南ユダ王国だ。
「言葉一つ」で一つの国が二つに割れた。
このことを、聖書は後に何度も振り返る。
「もし若者でなく長老の言葉を聞いていたなら」と。
リーダーが誰の意見を聞くかは、国の運命を変える。
こうして始まった分裂王国の時代。
北と南は時に戦い、時に協力しながら、それぞれの道を歩いた。
そしてそれぞれの道の末に、それぞれの滅亡が待っていた。
第八章 ~ エリヤ ~ 炎の預言者 ~
王国が分裂してからしばらく経った頃、北イスラエル王国に特にひどい王が現れた。
アハブ王だ。
彼はバアル神を国家宗教に据え、神の預言者たちを殺しにかかった。
そんな時代に、突然現れた男がいる。
エリヤだ。
どこから来たかもよくわからない。「テシベ人エリヤ」とだけ紹介される。
エリヤはアハブのもとに乗り込んで言った。
「わたしが仕える神の命にかけて宣言する。これから数年間、わたしが宣言しない限り、雨も露も降らない」
そう言って消えた。
三年間、雨が降らなかった。
エリヤは神に隠された川のそばに座って水を飲み、カラスが運んでくるパンと肉を食べて生きた。
川が干上がると、シドンのサレプタという町に行き、貧しい寡婦の家に世話になった。
寡婦が言った。「最後の食料でパンを焼いて、子供と食べて死ぬつもりです」
エリヤが言った。「先にわたしにパンを作ってくれ。そうすれば壺の粉は尽きず、瓶の油はなくならない。雨が降る日まで」
寡婦は言われた通りにした。
粉は尽きなかった。油はなくならなかった。
三年後、エリヤはアハブのもとに戻った。
「イスラエルを苦しめた者め!」とアハブが叫んだ。
「苦しめたのはあなたです。バアルに従って神の命令を捨てたあなたが」
そしてエリヤは提案した。
「今日、決着をつけましょう。バアルの預言者四百五十人とわたし一人で、どちらの神が本物か決める」
カルメル山に全民衆が集まった。
バアルの預言者たちが祭壇を作り、牛を供え、火をつけずにバアルに祈った。
「バアルよ、答えてくれ!」
朝から昼まで叫び続けた。何も起きなかった。
エリヤが言った。「もっと声を大きくしたら? 眠っているのかもしれないし、用を足しているのかもしれない。旅に出ているかも」
四百五十人が傷をつけて叫び続けた。夕方まで。
何も起きなかった。
今度はエリヤの番だ。
エリヤは壊れた祭壇を直した。牛を供えた。
そして言った。「水を四つの壺に入れて、いけにえと薪にかけなさい」
三回繰り返した。祭壇の溝に水が満ちるまで水をかけた。
わざと燃えにくくした。
それから神に祈った。
「神よ、あなたがイスラエルの神であること、わたしがあなたのしもべであることを、今日この民に示してください」
神の火が降りた。
いけにえも薪も石も土も、溝の水まで焼き尽くした。
民が叫んだ。「神こそ神だ! 神こそ神だ!」
バアルの預言者四百五十人は、その日に捕らえられた。
これほどの大勝利の翌日。
エリヤは一人で荒野に逃げた。
アハブの妻イゼベルから「明日お前を殺す」というメッセージが来たからだ。
ロテムの木の下に座って、こう言った。
「神よ、もう十分です。わたしの命を取ってください。わたしは先祖たちより優れてはいません」
四百五十人を倒した男が、女王一人の脅しで力尽きた。
神が使いを送った。
「起きて食べなさい」
頭のそばを見ると、焼いた菓子と水の入った壺があった。
「旅が長くなる。起きて食べなさい」
エリヤは食べて、水を飲んで、また眠った。
もう一度食べた。
そしてホレブ山まで旅した。四十日かかった。
洞窟に入って横たわっていると、神の声が聞こえた。
「エリヤよ、ここで何をしているのか」
「わたし一人だけ残りました。彼らはあなたの契約を捨て、祭壇を壊し、預言者を剣で殺しました。わたしの命も狙われています」
「出て、山の上に立ちなさい」
大風が吹いた。山を裂き、岩を砕くような嵐。
神はその中にいなかった。
地震が来た。
神はその中にいなかった。
火が来た。
神はその中にいなかった。
そして火の後、かすかな、細い声がした。
エリヤはマントで顔を覆い、洞窟の入り口に立った。
「エリヤよ、ここで何をしているのか」
「わたし一人だけ残りました……」
神は言った。
「戻りなさい。道のりがある。なお、バアルにひざまずかなかった者が七千人いる」
「一人だけ残った」と思っていた。実は七千人いた。
一人で戦っていると思っていたが、見えないところに仲間がいた。
それを教えるために、嵐でも地震でも火でもなく、神は「細い声」で来た。
旧約聖書の中でも特に美しい場面のひとつだ。
エリヤは立ち上がって戻った。
仕事はまだあった。




