第13話 サムソン前編 最強の問題児あらわる
士師記屈指の怪物、サムソン登場です。
怪力は本物、判断力はかなり怪しい。
強いだけでは人間どうにもならない、という見本みたいな男です。
第十四章 ~ サムソン ~ 最強のバカとデリラ ~
士師記の最後を飾るのは、おそらく旧約聖書の中で最もエンターテイメント性の高い人物だ。
サムソン。
生まれる前から神に選ばれていた。預言はこうだった。
「この子はナジル人として神に捧げられる。頭に剃刀を当ててはならない。この子はペリシテ人からイスラエルを救い始める者となる」
ナジル人とは、神への特別な誓願を立てた者のことで、その誓いが続く間は酒を飲まず、死体に触れず、頭を剃らないという決まりがある。
サムソンは育って、怪力の持ち主になった。
どのくらいの怪力かというと、子ライオンを素手で引き裂ける。
こういうことが普通にできる。
さてそのサムソン、ペリシテ人の町に出かけてペリシテ人の娘を気に入ってしまった。
「あの娘を嫁にしてくれ」と父母に言いに帰ってきた。
父母は困った。
「ヘブライ人の娘の中から選べないのか。なぜわざわざペリシテ人の娘を……」
「彼女がいい。彼女を取ってくれ」
交渉しても無駄そうだったので、家族で会いに行った。
道中、若いライオンが吠えかかってきた。
サムソンは素手でライオンを引き裂いた。ヤギを引き裂くようにあっさりと。
家族には黙っていた。
その後また会いに行った時、ライオンの死骸の中に蜂が巣を作り、蜂蜜が満ちていた。手ですくって食べながら歩いた。
結婚の宴が七日間開かれた。
サムソンは三十人のペリシテ人の宴の出席者になぞなぞを出した。
「食べるものが食べる者から出た。甘いものが強いものから出た。七日以内に答えたら亜麻布三十着と礼服三十着を払う。答えられなければお前たちが払え」
ライオンの死骸から蜂蜜が出た、という話だ。知っている者にしか解けない問題だ。
三日経っても答えが出なかった。
ペリシテ人たちは、サムソンの妻に圧力をかけた。
「旦那からなぞなぞの答えを聞き出せ。さもなければお前と父の家を焼く」
妻は七日間泣き続けた。
「わたしを嫌いなのね。愛していないのね。なぞなぞも教えてくれない」
「父母にも教えていないのに、なんで妻に教えるんだ」
七日目に諦めたサムソンは、妻に答えを教えた。
妻はペリシテ人に教えた。
七日目の夕暮れ前にペリシテ人たちが言った。
「蜂蜜より甘いものは何か。ライオンより強いものは何か」
サムソンは叫んだ。
「わたしの雌牛で耕さなければ、解けなかったはずだ!」
そして三十人を殺して服を奪い、賭けを払い、怒って帰った。
妻は別のペリシテ人の男に嫁がせられた。
麦刈りの頃に取り戻しに来たサムソンは事情を告げられた。
サムソンはペリシテ人に言った。
「今度やることはお前たちのせいだ」
三百匹の狐を捕まえた。
尻尾同士を結んで、松明を縛りつけた。
火をつけてペリシテ人の麦畑に放った。
三百匹の火狐が走り回り、麦が全部燃えた。
ペリシテ人がサムソンの元妻とその父を焼き殺した。
サムソンはさらに大勢のペリシテ人を殺した。
ペリシテ人がユダ族の地に攻め込んできた。「サムソンを引き渡せ」と言う。
ユダ族の三千人がサムソンを縛りに来た。
「おい、ペリシテ人がこの地を支配している状況でなぜこんなことをするんだ」
「あなたを縛ってペリシテ人に渡すために来た。我々は困っている」
「渡すだけか。自分では手を下さないと約束してくれ」
「渡すだけだ」
縛られた。ペリシテ人のところに連れていかれた。
ペリシテ人が大声を上げて向かってきた。
その瞬間、霊がサムソンに降った。
縛っていた縄が切れた。燃えた亜麻のように。
近くに落ちていたロバのあごの骨を拾った。
一人で千人を打ち殺した。
「あごの骨一本で千人! あごの骨で無数を倒した!」と歌った。
そして喉が渇いたことに気づいた。
「神よ、あなたがこの大きな救いをしてくださった。今わたしは渇いて死にそうです。ペリシテ人の手に落ちてしまいます」
神が地面を裂き、水が出た。サムソンは飲んで元気になった。
以後二十年、サムソンはイスラエルの士師として治めた。




