表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】黄金の檻 〜冷淡だった最強魔導師が理性を失った理由〜  作者: 雪白めると
【第三幕:理性の瓦解、暴走する香り】
20/30

20_救世主、リオネルの察し

(彼女は……勘付いているの?)

(男性にしか感じられないはずの、わたしの『誘惑の香り』に……?)


 今のところ、この香りのトリガーは、レインハルト様へのわたしの「欲情」であることは分かっています。

 けれど、クラリス様は女学生の中でも群を抜いて敏感な水魔法の使い手。

 香りを「匂い」としてではなく、大気を震わせる「異質な魔力波形」として感知しているのかもしれません。


「……まさか、エリュシオン嬢。貴女、何か『禁忌の術』でもお使いではなくて? レインハルト様の思考を奪うような、不浄な何かを」

「そ、そんなことは……っ!」

「いい加減にするんだ、ヴァレンティーヌ。僕が研究しているのは彼女の存在そのものだ。……他者が口を出す領域ではない」


 レインハルト様がわたしの前に立ち、鉄壁の守護を見せます。

 けれど、室内に立ち込める「しっとりとした熱気」と、隠しきれていない「錬成寝台」が、あまりにも説得力を欠いていました。


「け、け、け、け、研究って、エリュシオン嬢をですか!?なんのために彼女を!????」

「………愛の深淵を解明しようとしているだけだ」

「あ、あ、あ、愛の深淵ですってえぇぇぇっ!?ほんとうに一体どうなされたのですかッ!?ここ数日でのあなたの変わりようは普通ではありませんわ!?」

「…………ふう……、ヴァレンティーヌ。いい加減にしなさい。もともと僕と彼女は婚約者だろう。なんの不思議があるというんだ」


 その声は、怒りが滲みはじめていました。

 レインハルト様の周囲に金色の光が渦巻きはじめ、金粉のような粒子が舞い上がる。

 彼の前髪がふわりと浮いたかと思うと、部屋中の空気が鳴動し始めた。


 ゴトゴト……ガタガタ………。


「ひっ……!?」

「レインハルト様!?お止めになって……!!」


わたしが止めようとしたその時、廊下からバタバタと騒がしい足音が近づいてきました。


「――姉貴ッ!!やっぱりここにいたのかよ!イザベラ嬢が俺のとこまで来て…ッ」


 現れたのは、クラリス様の弟、リオネルでした。

 彼は息を切らしながら室内を見渡し、一瞬で状況を把握しました。

 ……いえ、把握しすぎて、その場に固まりました。


「…………。おい、姉貴」

「何かしら、リオネル。今わたくしは、魔導の正義についてお話ししているのよ」

「正義もクソもねーよ。……あそこに錬成されたベッドが見えねーのか?」


 リオネルは研究室にはあまりに不釣り合いな豪華な寝台を一瞥し、天を仰ぎました。

 そして、冷や汗を流しながら、依然として戦闘態勢の姉の腕を掴みました。


「いいか、姉貴。察してやれよ。……今のレインハルト様は『最強の魔導師』じゃねぇ。『最強に盛った婚約者』なんだよ。ここに居座るのは、火薬庫の中で火遊びするより危ねーぜ」

「何を……っ、失礼なことを! レインハルト様がそんな……!」

「いいから来いって! シャルロットも、変なことされる前に逃げろ……って、もう遅そうだな。レインハルト様、目がマジだもんな……」


 リオネルは不憫なものを見る目でわたしを一瞥すると、「失礼しましたぁっ!」と叫んで、喚き散らすクラリス様を引きずるようにして去っていきました。





 再び訪れた、重苦しいほどの静寂。

 レインハルト様は扉に鍵をかけると、再びわたしの方へと向き直りました。


「……邪魔が入ったが。むしろ、今の騒動で君の鼓動はさらに速くなったようだ。……香りが立ち上がりはじめている」


 彼はわたしの頬、唇とを撫でるようになぞり、ブラウスのボタンに手をかける。


「あ……っ、レインハルト、様……」

「研究は、まだ始まったばかりだ。……さあ、続きをしよう。今度は、誰にも邪魔させない」


 黄金の瞳が、夕闇の中で禍々しく、けれど愛おしく光ります。

 わたしは、再び錬成された寝台の上で、最強の魔導師による「徹底的な調査」を受け入れる準備をするのでした。







レインハルトが徐々に壊れていった第三幕、これにて終幕となります。


次回、第四幕の幕開け、ついにシャルロットがクラリスによって告発されてしまいます――、秘め事は守られるのか?そして新しい命の芽吹き……お楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冷淡ヒーローの“我慢”が限界に近づいていく、 すれ違いから始まる異世界執着愛。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ